3agreeable No.56 October 2020/10 Nan-Yao Su/バイエルクロップサイエンス株式会社 大嶽 譲治Distinguished Professor of EntomologyDepartment of Entomology&Nematology アメリカに生息するカンザイシロアリは数種いますが、経済的な観点から重要とされる種としてはCryptotermes brevisとIncisitermes minor(アメリカカンザイシロアリ)の2種が際立っています。シロアリによる経済的影響に関する2010年の試算によると、これら2種による影響は合わせて全体の20%を占め、額にしておよそ40億米ドルに及びます。Cryptotermes brevisはフロリダ州、メキシコ湾沿岸、サウスカロライナ州までの大西洋沿岸で確認されています。アメリカカンザイシロアリは、主にカリフォルニア州南部で見られますが、アリゾナ州、テキサ図1 山状に積み上げられた糞塊図2 Cryptotermes brevisの羽ス州、フロリダ州でも確認されています。乾材への侵食の最初の兆候は、侵食された木材の外にシロアリの糞が押し出され山状に積み上げられるというものです(図1)。有翅型のカンザイシロアリの羽には、前縁部付近に非常に硬化した翅脈が3つ以上存在しますが、Cryptotermes brevisの羽の中脈は外側3分中脈の1で明らかに上に向かってカーブを描いています(図2)。Cryptotermes brevisの兵隊アリには、頭部が特徴的な形状をしており(図3)、アリのような捕食者からの侵入を防ぐため、糞を外に押し出す穴を塞ぐ栓として機能する。一方、第12回世界のシロアリについて─米国編 ─アメリカのシロアリたち②
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