agreeable 第56号(令和2年10月号)
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耐久設計から見た基礎耐久性と床下空間床下の耐久措置耐久性各論では敷地、基礎、床下、土台、外壁まわり、浴室及び脱衣室、台所その他水を使用する箇所、屋根などの部分及びその他留意すべき箇所の9項目について備えるべき要件、必要な措置について規定しています。前編では基礎及び床下の規定内容について解説します。旧版から新版の間の建築工法の大きな変化として、基礎構造の変化があります。住宅金融支援機構によるフラット35住宅仕様実態調査によると、平成29年度の基礎の構造では91%がべた基礎、9%が布基礎となっています。また、床下の換気措置では約82%がねこ土台、4m以内ごとの床下換気孔が約2%、約断熱工法となっています。ねこ土台とは、土台と基礎の間にねこ(土台と基礎の間にかい込むもので、モルタル、合成樹脂製、金属製等がある)を挟んだものをいいます。旧版では基礎の形式は布基礎が想定されており、基礎の構造も、軟弱地盤でないことや不同沈下の恐れのない場合には、無筋コンクリートが許容されていました。阪神・淡路大震災以降の耐震性能の強化を受けて、平成12年5月23日建設省告示第1347号「建築物の基礎の構造方法及び構造計算の基準を定める件」において、原則、基礎の構造は鉄筋コンクリート造と規定されました。そこで、新版では基礎の構造安全性にかかわる規定については、建築基準法施行令(以下、令とする)第38条(基礎)、建設省告示第1347号、令第42条(土台及び基礎)等法令に定める要件を充足するものとし、耐久性にかかわる事項のみを規定することになりました。地盤面から基礎の上端までの基礎の立上り高さは、土台、床組材の耐久性や床下の防湿のためには、高いほどよいことになります。しかしながら、無筋コンクリートの布基礎では、地震力などの水平力に対しては強度的に問題があるため、旧版では版では基礎の構造強度は法令を充足しているものとし、湿気や腐朽菌等の汚染からの隔離や、保守点検・修理などの床下空間における人の移動・作業を容易にする床下の実効高さを確保するために、40cm(長期優良住宅の認定基準準拠)としています。令第22条において、「床の高さは直下の地面からその床の上面まで45cm以上、外壁の床下部分には、壁の長さ5m以下ごとに面積300㎠以上の換気孔を設け、これにねずみの侵入をふせぐための設備をすること」と床下の高さと換気が規定されています。ただし、床下がコンクリートなどで防湿されている場合や地面から発生する水蒸気により腐食しないものであればこの規定が適用されないことなっています。べた基礎の場合、床下の防湿や乾燥により床組み材等における腐朽菌の活動は抑制されますが、シロアリの侵入等を阻害することは困難なため、令22条の例外規定にかかわらず床下の実効高さを確保し、保守点検を容易にすることが必要になります。また、ねこ土台においては、基礎立上り部分に換気口を設ける必要がないため、耐震強度を低下させることなく換気のための開口面積を増やすことができるため、令第22条に定める有効換気面積の1・25倍としています。さらに、円滑な床下換気のためには、間仕切り壁等外周部以外の基礎立上げ部分においても通風を阻害しないように有効な換気口を設ける必要があります(図1)。その際、床下点検等の区画移動を容易にするため幅500mm以上、高さ330mm以上の開口を有する人通口とすることが望ましいとしています。人通口を設けない場合は、区画毎に500mm×500mm以上で人の円滑な侵入を可能にする床下点検口の設置を求めています。なお、人通口は、風の通りを考慮しながら構造耐力上支障のない部分に設ける必要があります(図2)。床下には、基礎の内側の土壌に前号で示した適用区分に応じて土壌処理を行います。布基礎の場合には床下地面に防湿を行います。床下には木材の残材、木屑などを放置しないと規定しています。シロアリの有翅虫は床下換気口を通って床下に散乱している残材片に営巣し、あるいは土中に蟻道をつくって屋外より建築物床下に侵入し、床束、基礎表面を伝って建築物を構成している第3回元大阪市立大学 土井 正         430cmを標準としていました。新agreeable No.56 October 2020/1015%が床下換気を行わない基礎「木造建築物等防腐・防蟻・防虫処理技術指針・同解説」について建築工法、材料等の技術的変化に対応した耐久設計各論(前編)

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