agreeable 第56号(令和2年10月号)
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夏の後の日本では、台風!世界中で発生している熱帯低気圧台風とシロアリシロアリのお家に住む生き物Typhoon irose 暑い夏が過ぎたと思えば、日本は台風シーズンに入ります。台風は日本だけでなくアジア各国にも被害をもたらす気象現象です。2000年からは、アジア14カ国からなる台風委会(The て、各国から提案された名前が台風に名付けられています。名前は140個がリストになっていて、全部を順に使ったら、ひとつ目の名前に戻る形で繰り返して使われています。台風の進路は、スーパーコンピューター(理化学研究所と富士通が開発した「京(けい)」や「富岳(ふがく:2020年6月に世界計算速度ランキングで1位)」が有名ですね)の開発が進み、計算速度がグンと上がったことにより、以前とは比べ物にならない精度かつ、以前よりもかなり早い段階で、台風の状況を予測できる様になってきました。そのため人間は、何時間後にどのような強さの風や雨をもたらす台風が、どんな経路で迫ってくるのかをあらかじめ知ることができるようになりました。こCommESCAP/WMOittee)によっand Fudeyasu, 2014れによって、自分の命や財産を守るための対策を事前に準備することが、ある程度可能となってきたわけです。台風のような熱帯低気圧は日本やアジア地域だけでなく、世界中で発生しています。大雑把に言えば、台風(日本を含むアジア地域)、サイクロン(アメリカなどの北中米地域)、ハリケーン(その他の地域)と、発生地域によって異なる名前で呼ばれています。この熱帯低気圧について全世   員      6界を見渡して統計をとると、これらが上陸する国として上位にあがってくる国名の中に日本が含まれています。1年間に上陸する台風の数を比べると、中国(6・7個)、フィリピン(4・0個)、日本(3・7個)と、世界の中でも日本は台風の上陸が多い国であることがわかります[H「上陸した」台風の個数を数えたに過ぎませんから、上陸しなかった台風の数をも加算すれば、日本の生活は世界の中でも台風の到来と切り離すことができない状況にあると言えそうです。]。これは、台風は自然界にも人間社会にも影響を与えます。森林の木々が暴風によって折れたり倒れたりするばかりでなく、場合によっては暴雨や洪水によって、土壌ごと崩れたり流れたりするような森林の大規模な崩壊が起こります。人間社会にも、樹木の倒壊に加えて、建築物の損壊といった被害をもたらします(図1)。台風などの熱帯低気圧が通る範囲には、もちろんシロアリも棲息していることを考えると、シロアリの生活も台風の影響を受けているのではないかとも思えます。具体的には、台風によって被害を受けた樹木の倒木や切り株が、木材を餌や住処とする昆虫にとっては新たに侵入しやすい場所となっている可能性が考えられます。日本と同じように台風の上陸個数が多いフィリピンでは、台風による被害を受けた倒木や切り株を処分せずそのままにしておいた場合、台[Dhang, 2020]。もちろん、被風被害から1年半の間に倒木や切り株に昆虫が住み着き、シロアリの爆発的な発生につながっている例が観測されています害木の適切な処理を行った場合には、シロアリの爆発的な発生は抑えられるかもしれません。この事例から考えると、台風によって損壊を受けた木造建築物も、シロアリにとって侵入・定住しやすい格好の現場となることが推測され、被害箇所の適切な処理は害虫防除に重要であると言えるでしょう。台風は私たちが生きている今の時代にだけ存在しているものではなく、地球が宇宙を公転・自転して動いている天体活動によって、海流や気流が生まれる中で起こる現象です。そのため、災害を引き起こす現象だからといって、台風を完全になくすことはできません。日本では台風や梅雨は、毎年付き合っていくしかない季節の事象なのです。こういった自然災害が多い国では、住居の建築やメンテナンスには資金や手間がかかるという点から、昨今では自分で家を建熊本高等専門学校 生物化学システム工学科・拠点化プロジェクト系 木原 久美子第7回agreeable No.56 October 2020/10図1 2004年10月に発生した台風により、根こそぎ倒壊した樹木とそれによる打撃を受けた建物〜同居?居候?離れられない関係のハナシ。〜

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