シロアリのお家に住むシロアリ共生:ひとところに一緒にいるということ7agreeable No.56 October 2020/10yukoaewata, 2002Japanophilus hojoies formosanusSinopilus tuberosuCaciteres llてずに賃貸住宅に居住すると言う選択をする人もいる様子です。確かに、誰かがメンテナンスをしてくれる家に居住するのは、楽チンな側面もあります。そんなことを考えながらシロアリの巣の中を覗いてみると、シロアリ以外の生き物に遭遇することが多々あります。賃貸住宅さながらに、シロアリの体やシロアリの巣を我が家のように利用して棲んでいる生き物たちです。例えば、ハネカクシという昆虫を見たことがあるでしょうか。イエシロアリ(Coptoter巣内からも、ハネカクシ(Iや m m ]。同じように他のつかっています[Maruyama and シロアリ種の巣からも、そのシロアリの種ごとに異なるハネカクシが見つかっています(図2)。このように、シロアリと何らかの強)の)が見い関係性を持って棲息している昆虫は「好白蟻性昆虫」と呼ばれています。さらに、シロアリと好白蟻性昆虫は、その腸内に線虫を持っていることがあります(図3)。線虫は微小なので私たちが気づくことはほとんどありませんが、土の中にも水の中にも山の上にも海の中にも、至る所に住んでいる珍しくはない生物です。ただし、同じ巣の中で一緒に棲息しているシロアリと好白[He2020蟻性昆虫であるにもかかわらず、それぞれが独自の異なる線虫を保持しているというのですから不思議です[Kanzaki, 等]。線虫同士も棲み分けをしているのですね。さらに、あるシロアリ(s)は、シロアリなのに自分たちだけの巣を持たず、他のシロアリの家に潜り込んで生活しているといいます。しかもこのシロアリは、自分で餌を巣外に取りに行くことすらもせずに、住まわせてもらっている巣の巣材を食べているらしいのです]。大家になって家を貸したら、貸した相手は壁をほじって食べていたなんて、想像するだけでびっくりですね。シロアリは、他の生物と共に生活している場合がほとんどです。シロアリは、腸の中に原生生物や細菌などの多種類の微生物を保持し、それらの力を使って食べた木材を分解しているこemans, 2019とはよく知られています。さらには、シロアリの巣の中に、別の生物が居候しているばかりでなく、シロアリの別の種までもが同居する場合もあるという状況です。それに加えて、シロアリの腸内には線虫など他の生物までもが棲息しているとのこと。シロアリの近くにどんな生き物がいるかどうかに着目するだけで、枚挙にいとまの無いほどの生物が列挙されてくるのですから驚きです。このように、生き物同士が関係性を持って生きている状況を表す単語のひとつとして「共生」という言葉があります。これを広辞苑で調べると、『ともに所を「共生」という言葉を聞くと、関係する生物が双方ともに利益を受けている相利共生や、一方だけが利益を受けている片利共生や寄生といった言葉も思い出されます。広辞苑の定義のようにもう少し広義の意味でとらえれば、これらはすべて「共生」のなかの一形態であると言うことができるのです。同じくして生活すること。異種の生物が行動的・生理的な結びつきをもち、一所に生活している状態。』と定義されています。図2 シロアリの巣に生息している昆虫の一例;ムカシシロアリ(Mastotermes darwiniensis)の巣に棲んでいるハネカクシの一種。図3 線虫の一例(サイズは1㎜程度。オオシロアリ腸内から単離した線虫Poikilolaimus oxycercus);シロアリ自身や、シロアリの巣に生息している好白蟻性昆虫自身が、それぞれの種類の線虫を保持している。(森林総合研究所・神崎菜摘博士 提供写真)
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