agreeable 第64号(令和4年10月号)
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1.結果して調査目的のほか調査対象とし用途などについて述べました。今回のその2では、検討結果と考察について報告します。(1)被害率財建造物に発見された生物劣化種別の被害率(発生率)を示します。被害率は、被害を受けた文化財建造物数÷全調査文化財建造物件数(136件)で算出しました。であり74%の建造物に見られ、蟻害もそれにほぼ等しい被害率となっています。いずれも建物の構造的な安全性に大きく影響する被害である点が注目すべき点です。カカビの現場での判定は難しく変色前回のその1では、調査概要とた文化財建造物の規模、築年数、図1に今回検討対象とした文化最も多く発見された被害は腐朽ビは46件(34%)と低いですが、や腐朽に分類されている可能性があります。各連携団体共通の調査方法を検討することを含めて今後の課題です。なお、昭和46年から3年間文化庁が実施した既往の調査と比較すると、蟻害は4割から7割へ、虫害は5割から6割へと増加しています(腐朽についてはデータなし)。同じ文化財を調査しているわけではないので正しい比較はできませんが、蟻害・虫害は増大の傾向にあるのかもしれません。(2)蟻害の地域別被害率図2に調査地域ごとの蟻害による被害率を示しました。この際の被害率は、蟻害を受けた文化財建造物数÷各調査地域の全調査件数で算出しました。全国平均の蟻害による被害率(赤線)は、上でも述べたとおり74%ですが、それを上回っているのが中部(東海)、九州、沖縄です。ヤいると思われます。関東は率としては、全国平均にほぼ等しいです。上回っている点は注意すべきです。(3)蟻害・腐朽の築年数別被害率マトシロアリとともにイエシロアリの生息地であることが関係してなお、今回の調査結果は、全ての地域で既往の文化庁の調査結果を図3、図4に築年数別の蟻害、腐朽被害を受けた建造物の割合を示しました。算出方法は、それぞれの被害を受けた築年数別建造物数÷築年数別の全調査件数としました。一般に築年数の増加とともに被害率も上昇する傾向がありますが、図では蟻害、腐朽ともそうなってはいません。これは築年数が古くなるにつれて、補修される建造物も多くなる結果、見かけの被害率が築年数と相関をもたなくなることが一つの理由かと考えられます。今後の調査では、補修をいつどこに実施したかも合わせて調べることが正確な被害率を知る上で必要となるでしょう。(4)各被害の部材別割合図5、図6に部材別の蟻害と腐朽の発生内訳を示しました。蟻害、腐朽ともに、軸組(主として土台、柱脚部)の被害が最も多く蟻害で被害率(%)被害率(%)沖縄九州中国北陸・関西東海関東東北全体被害率(%)被害率(%)第2回関東学院大学名誉教授 中島 正夫           4agreeable No.64 October 2022/1041%、腐朽で43%を占めています。床組27%軸組41%100806040200全体10〜97100〜200〜300〜400〜500〜700築年数図5 蟻害部材別割合腐朽梁3%その他5%束柱7%柱26%100806040200100806040200蟻害27件蟻害土台16%大引15%床束6%根太5%14件100件4件100件101件91件100806040200全体10〜97100〜200〜300〜400〜500〜700築年数12件15件19件9件被害率蟻害虫害腐朽カビ蟻害46件図4 腐朽の築年数別被害率図1 蟻害・虫害・腐朽・カビ被害率図2 蟻害の地域別被害率図3 蟻害の築年数別被害率平成28年から平成30年における文化財建造物の蟻害・腐朽調査結果の検討その2 結果と考察

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