agreeable 第65号(令和5年1月号)
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一般財団法人残留農薬研究所 小坂 忠司 シリーズ2において、有機塩素系殺虫剤メトキシクロル(Methoxychlor)の獲得免疫である抗体価に及ぼす影響について実験例を示しました。今回は、2種類の農薬メトキシクロルおよび有機リン剤のパラチオンについて免疫機能の攪乱作用を中心に実験例を記載いたします。 最初に、前号にて代表的な皮膚感作性試験方法としてマウス局所リンパ節増殖試験(LLNA: Local Lymph Node Assay)を紹介しました。本実験ではLLNA法をマウスの皮膚アレルギー反応モデルと考えて、実験結果のアレルギー反応強度の評価指標としてEC3値に着目して、メトキシクロルおよびパラチオンの免疫攪乱作用を調査しました。表1に実験概要を示す。3週齢の幼若マウスにメトキシクロル(MXC)およびパラチオン(PraT)を5日間経口投与(MXC; 30, 300 mg/kg、PraT; 0.4, 1.2 mg/kg)して、4週間後に皮膚感作性物質フェノキシ酢酸系農薬(DB)を0、2.5、5、10%濃度でLLNA法を行い、アレルギー反応(感作性反応)の程度をEC3値で評価しました。図1では、上段は前投与したメトキシクロルの投与用量別に、下段はパラチオンの投与用量別にフェノキシ酢酸11agreeable No.65 January 2023/1表1  メトキシクロルおよびパラチオンの免疫攪乱影響 Aマウス皮膚感作性(LLNA法)のEC3に及ぼす効果概要表2  メトキシクロルおよびパラチオンの免疫攪乱影響 Bマウス皮膚アレルギー(アトピー性皮膚炎)に及ぼす効果概要図1  メトキシクロルおよびパラチオンの免疫攪乱影響 Aフェノキシ酢酸系農薬(DB)のEC3に及ぼす効果系農薬のLLNA実験の成績(グラフ)を示しました。メトキシクロル投与動物のEC3値は、対照群の動物で6.32、100 mg/kg投与動物で3.19、300 mg/kg投与動物で1.32となり、メトキシクロルの投与用量相関性に投与動物のアレルギー反応(皮膚感作性)に対する感受性は増加していました。また、300 mg/kg投与動物ではEC3値で評価して約5倍程度の皮膚感作性の感受性が増加していました。同様に、パラチオン投与動物のEC3値は、対照群の動物で7.73、0.4 mg/kg投与動物で1.39、1.2 mg/kg投与動物で0.94となり、パラチオンの投与用量相関性に投与動物のアレルギー反応に対する感受性は増加して、1.2 mg/kg投与動物ではEC3値で約8倍程度の皮膚感作性の感受性が増加していました。これらのことから、メトキシクロルおよびパラチオンを幼若期に反復投与した動物において、抗原であるフェノキシ酢酸系農薬のアレルギー反応(皮膚感作性)に対する感受性が増加したものと考えられました。 次に、アトピー性皮膚炎がヒトの皮膚アレルギー症状としてよく知られていることから、皮膚アトピーモデルを用薬剤の免疫毒性-アレルギー性反応(シリーズ4)薬剤の知識

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