住み場所の影響3agreeable No.65 January 2023/1なるだけでなく、風通しも悪くなると思われるので、巣の環境に与える影響は少なくないはずだ。ということで、巣から直径5mの範囲にある高さ1m以上の木をすべて調べ、巣からの距離と木の太さから巣の周囲全体のどのくらいを遮っているか角度で計算してみた。そうしたら、スミオオキノコシロアリの巣には平均4・4本の木があり、周囲の16・2度を遮っていた。アカオオキノコシロアリの巣では平均4・9本の木がっぱりアカオオキノコシロアリの巣の方がたくさんの木に囲まれ、日当たりや風通しが悪いところに多い、という結果になったのである。とすれば、こうした環境では低いべったりとした巣の方が都合がいい、ということなのだろうか。そんなある時、普段あまり調査に行かないアカシアの植林地に行く機会を得たのだが、そこでなんとも予想外の巣を見つけてしまった。アカシアの植林地は手入れがよくされておりアカシア以外の木が生えておらず、風通しも日当たりも良い環境であった。私はいつものようにオオキノコシロアリの調査をしようとぶらぶらと巣を見て回っていた。その形から明らかにスミオオキノコシロアリの巣だと思われるものがいくつもあったのはいいのだけれど、あれ、なんか、ちょっと、違和感がある。そう思って巣を少し壊して調べてみると、なんとそのうちのいくつかはアカオオキノコシロアリの巣だったのだ。なんてことだ、日当たりと風通しのいいところでは、アカオオキノコシロアリがスミオオキノコシロアリとそっくりな巣を作っているではないか。でも紹介したように、タイ南部のとても暑い地域ではオオキノコシロアリと思われるシロアリがスミオオキノコシロアリの巣の上に煙突を備えたような形の巣を作っていたのである(写真4)。この煙突は飾りではなく、巣の中心部までつながった本物の煙突である。煙突からは巣の中の高温多湿な空気が絶え間なく湧き出てきていたことからすると、暑い地域ではこういう巣が適しているのかもしれない。このようにオオキノコシロアリの巣の形はそこの環境に適した機能的なデザインになっているようだ。それぞれの巣がどう機能するかということについては、おそらくキノコを育てるための温度、換気、効率的な空間作りなどが要因だと思うのだけれど、これだという説明が思い付かないまま、ずいぶんと月日が流れてしまっている。いつかきっと、私のシロアリ自由研究の集大成として大々的に発表したいものである。ではその日まで、さようなら。になるのだけれど、具体的にはどんな違いがあるんだろうか。森林の縁から奥の方へ行くと木が密に生い茂ってきて薄暗くなる感じがあるので、今度は日当たり具合を比べてみることにした。なぜなら、日当たりはオオキノコシロアリにはとても重要な温度に大きく影響するはずだからである。日当たりを直接測るのはちょっと難しそうだけれど、木の生い茂り具合、すなわち木にどのくらい覆われているか、ということならなんとかなりそうだ。そこで、当時はその筋の人しか持っていなかった魚眼レンズを使って、巣の周囲の写真を撮って覆われ具合を調べたのである(写真3)。写真の白く写っているところが木に覆われていない隙間なので、この白い部分が全体のどのくらいの割合かを計算すればよい。結果、スミオオキノコシロアリの巣では周囲の隙間は平均13・0%、アカオオキノコシロアリの巣では平コシロアリの巣のある場所(森林の奥)の方が木と木の隙間が少なくて日当たりが悪い、という予想通りの結果ではあったのだけれど、0・5%のちがいってどうなんだろうねえ。もう少し調べてみることにしよう。今度は、「木が密に生い茂っていて薄暗くなる」の「密に生い茂って」というところに注目して、巣の周囲に生えている木がどのくらいあるかを調べてみることにした。木が密に生い茂っていれば、日当たりが悪くさらにagreeable均12・5%であった。アカオオキノ見つかった巣の数写真3 魚眼レンズで撮影した巣の周囲図1 森林の縁と奥での種類の違い写真4 煙突を備えたオオキノコシロアリの巣 17・9度を遮っていた。ここでもや49号
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