agreeable 第65号(令和5年1月号)
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実験結果おわりに5agreeable No.65 January 2023/1塗布した供試体をそれぞれ用意しました。供試体数は各条件とも3としました。各供試体の被害度は、JISK1571に記載されている目視観察による被害度の判定基準に準じ、表1に示す0~5までの6段階で評価しました。その結果、腐朽に関して平均被害度が最も小さかったのは現代の木材保存剤を塗布したもので平均評価点数は0.7となりました。一方、ベンガラを塗布した供試体の平均評価点数は2.3でした。比較対照のために用意した無処理の供試体と比較しても、いずれのベンガラ塗布供試体とも腐朽の進行が同等もしくは早かったです。塗布回数別に平均腐朽度をみても腐朽の進行速度に大きな差はなく、試験期間終了時にはほとんどのベンガラ供試体の全面に腐朽が発生していました(写真7)。また、蟻害に関して被害が最も小さかったのは、腐朽と同様に現代の木材保存剤を塗布した供試体で、平均評価点数は0でした。これに対してベンガラ塗布供試体の被害度は大きく、平均評価点数はた。塗布回数別に平均被害度をみても蟻害の進行速度に大きな差はなく、試験期間終了時にはほとんどのベンガラ供試体の断面が大きく欠損する結果となりました(写真8)。なお念のために実験終了後、各供試体を回収してそれぞれを地上部分と地際部分、地中部分とに切り分けた上で圧縮試験を行ってみましたが(写真9)、地上部分に対して地際部分や地中部分の強度は1/3から1/5以下に低下しており、材料強度としても劣化が進んでいることが分かりました。以上、簡単な防腐、防蟻試験を行ってみましたが、ベンガラを表面に塗布した供試体は、試験開始から約3年経過した時点で無処理供試体と同等の腐朽・蟻害を受ける結果となりました。この結果からは、耐候性や防虫性はともかくとして、ベンガラに防腐、防蟻を期待することは難しいということになるかも知れません。ただ今回の結果は、ベンガラの調合、塗布方法などに不慣れな点があってのことかも知れず、これだけで最終的な判断ができるとは考えていません。今後、専門家に供試体の調製をお願いして再度の確認をできればと考えています。参考文献科学的研究、チルチンびと、2003年冬季号究、雄山閣、2015年粉末を水だけで溶いたもの、ベンガラ粉末を亜麻仁油で溶いたものなどを用意し、供試体への塗布回数は1回塗り、2回塗り、3回塗りの3通りとしました。複数回塗り重ねる際には、それぞれの回を塗布後に直射日光、高温多湿、雨水などを避けたところで1日間乾燥させた後で塗り重ねました。防腐性能は、カワラタケ、オオウズラタケを主たる腐朽菌とするファンガスセラー(腐朽促進槽)を用いました。写真4に示すファンガスセラーは、平均室温27℃、平均相対湿度96%に制御された室内に設置されており、そこに供試体を写真5に示すように格子状にランダム配置し、地表面下300mmの深さまで垂直に埋め込みました。2015年12月に試験を開始し、途中何回かの経過観察をしつつ2019年8月に最終的な腐朽状況の確認を行いました。一方、防蟻性能を確認するための野外杭試験は、民間企業が所有する種子島の屋外暴露試験地において2015年12月に開始しました。試験杭は防腐試験と同様に写真6に示す通り格子状にランダムに配置し、一定の間隔に餌木を設置しました。蟻害状況は途中何回かの経過観察を経て、設置から約3年経過した2019年10月に最終確認を行いました。なお、比較対照のために、無処理供試体と現代の一般的な表面処理用の木材保存剤(ビフェントリン、テブコナゾール、プロピコナゾールを有効成分とするもの)を012345          写真4 ファンガスセラーの様子写真5 ファンガスセラーに設置した供試体被害度表1 被害度の判定基準写真8 蟻害を受けた供試体の様子写真7 腐朽した供試体の表面写真6 種子島の試験地に設置した供試体写真9 圧縮試験の様子4.3であり無処理供試体と同等でし2) 北野信彦、ベンガラ塗装史の研1) 高田潤、ベンガラの歴史と材料基準健全部分的に軽度の腐朽又は蟻害全面的に軽度の腐朽又は蟻害2の状態の上に部分的に激しい腐朽全面的に激しい腐朽又は蟻害腐朽又は蟻害によって形が崩れる

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