しろありNo.165
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6Termite Journal 2016.1 No.165と曲げ強度の関係は負の相関が見られたが, それ以外は空隙率が低かったため, 強度との相関は認められなかった。また長さ方向に6分割した各部分での空隙率の最大値と曲げ強度の関係は, 中央部分360mmの空隙率と同様の傾向が見られ, 試験体全体の場合よりも, ばらつきが少なくなる傾向がみられた(図16)。4.おわりに 現時点では, 現場で使用できるX線装置は, その使用環境や条件が非常に制約されているため, 実験室実験が主となり, 実用的とはいえない。また, 水分がX線の透過に与える影響が大きいため, 含水率の高い木材中でシロアリを検出することは困難である。ただし, 今回のアメリカカンザイシロアリのように乾燥した木材中での検出は可能であったことから, 木材中におけるヒラタキクイムシ, ナガシンクイムシ, シバンムシ等の乾材害虫の食害生態を明らかにするには, X線装置の利用は適していると考えられる。引用文献1)Fuchs, A., A. Schreyer, S. Feuerbach and J. Korb (2004): A new technique for termite monitoring using computer tomography and endoscopy, Int. J. Pest Manag., 50, 63–66.2)Perna, A., C. Jost, E. Couturier, S. Valverde, S. Douady, G. Theraulaz (2008): The structure of gallery networks in the nests of termite Cubitermes spp. revealed by X-ray tomography, Naturwissenschaften, 95, 877–884.3)Himmi, S. K. (2014):X線CTを用いたアメリカカンザイシロアリの巣-坑道システムの解析,しろあり,162,35–36.4)Himmi, S. K., T. Yoshimura, Y. Yanase, M. Oya, T. Torigoe, S. Imazu (2014):X-ray tomographic analysis of the initial structure of the royal chamber and the nest-founding behavior of the drywood termite Incisitermes minor, J. Wood Sci., 60, 453–460.5)曽根晃一・森 健・井手正道・瀬戸口正和・山之内清竜(1995):X線断層撮影法(CTスキャン)のカシノナガキクイムシの坑道調査への応用,応動昆,39,341–344.6)木川りか・鳥越俊行・今津節生・本田光子・原田正彦・小峰幸夫・川野邊渉(2009):X線CTスキャナによる虫損部材の調査,保存科学,48,223–231.7)鳥越俊行・木川りか・原田正彦・小峰幸夫・今津節生・本田光子・川野邊渉(2010):X線CTによる被害材の調査と虫害の活動検出への応用,保存科学,49,191–196.8)簗瀬佳之・渡辺祐基・藤井義久・藤本いずみ・吉村 剛(2015):マイクロフォーカスX線CTによる木材中のヒラタキクイムシおよびアフリカヒラタキクイムシ幼虫の摂食過程の可視化,第27回日本環境動物昆虫学会発表要旨集,吹田,11月28・29日.9)Watanabe, H., Y. Yanase and Y. Fujii (2015): Evaluation of larval growth process and bamboo consumption of the bamboo powder-post beetle Dinoderus minutus using X-ray computed tomography, J. Wood Sci., 61, 171–177.10)渡辺祐基(2015):チビタケナガシンクイの食害生態の非破壊評価 -幼虫の成長過程と摂食量のX線CTによる評価-,しろあり164,43–44.11)森 拓郎・香束章博・簗瀬佳之・小松幸平(2010):シロアリ食害を受けた木材の曲げ及び圧縮特性,材料,59,297–302.12)森 拓郎・簗瀬佳之・田中 圭・河野孝太郎・野田康信・森 満範・栗﨑 宏・小松幸平(2013):生物劣化を受けた木材の曲げ及び圧縮強度特性とその劣化評価,材料,62,280–285.13)野口昌宏・吉村 剛・宮澤健二(2008):シロアリ被害を受けた木材の縦及び横圧縮強度,構造工学論文集,54B,171–176.14)簗瀬佳之・森 拓郎・吉村 剛(2011):アメリカカンザイシロアリ食害材の非破壊評価と曲げ強度性能,日本建築学会大会学術講演梗概集,C-1分冊,281–282.15)簗瀬佳之・森 拓郎・吉村 剛・藤原裕子・藤井義久・鳥越俊行・今津節生(2014):アメリカカンザイシロアリ食害材の空隙率と残存曲げ強度の関係,材料,63,320–325.16)Sobue, N. (1986):Measurement of Young’s modulus by the transient longitudinal vibration of wooden beams using a fast Fourier transformation spectrum analyzer, Mokuzai Gakkaishi, 32, 744–747.図16 長さ方向に6分割の最大空隙率(図8(d))と  曲げ強度の関係(簗瀬ら15)を改変)

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