しろありNo.165
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11Termite Journal 2016.1 No.165海外文献Overseas Literature1.要約 八ホウ酸 二ナトリウム四水和物(DOT)を注入(平均吸収量1.77%BAE)したベイマツと無処理ベイマツを1/2ずつ両サイドに配置した2次元アリーナを用いて, イエシロアリの採餌探索行動を観察した。試験アリーナは室内と野外に設置した。初期のトンネル構築行動は, 処理材による影響は受けなかった。処理材への忌避は3~5日経過後から認められた。死骸忌避行動による処理材への忌避は, 認められなかった。処理材と無処理材の位置を入れ替えた場合の遅効的な忌避行動は, 処理材を認識したものでは無く処理材の位置に関係していることが示された。2.緒言 シロアリに対して, 初めは忌避性を示さない遅効性薬剤が徐々に忌避反応を引き起こすことがある。これは採餌探索を行っているシロアリをスルフルアミド1), ヒドラメチルノン2), アバメクチン3), 硼酸塩4)に暴露した試験で報告されている。シロアリは八硼酸二ナトリウム四水和物(DOT)処理材を初めは摂食するが, 表面をある程度摂食すると食べなくなる4, 5)。この遅効的な摂食忌避反応の理由は判っていない。 シロアリは死骸のあるエリアを避ける傾向があることが, 一つの説明として挙げられるかもしれない。寒天を入れたシャーレでの穿孔行動の観察では, 防蟻剤の暴露箇所で致死がある程度速やかに起こったなら, 次の採餌探索を行うシロアリはその場所を避けるとされている6)。結果として, 防蟻剤自体は忌避性を示さないものでも, 死骸が原因で処理エリアを忌避する。この行動は“necrophobia(死骸忌避)”と呼ばれ, 非忌避性だが速効的なクロルピリフォスやクロルデンのような剤で見られる現象である2)。同じように, 部分的な採餌行動の低下は, ある種の食毒剤の近くでも起こるとされている3)。 遅効性薬剤に致死量以下で暴露した時, 学習によってシロアリが処理域を避ける可能性が, 2番目の説明として考えられる。理論上は, 非忌避性薬剤に(死には至らない程度)暴露した個体は, 不利益な経験と薬剤の存在を関連づけられるのかもしれない。Su1)らはこれを“associative learning”と述べ, “無駄な刺激と対応方法を関連づける能力”と定義している。同様に, Thorne and Breisch7)は, 行動の“aversion”と呼び, “化合物と体調不良のような不利益な影響を経験的に関連付けて学習した反応”と説明している。associa-tive learningやaversionにより, スルフルアミド8)やヒドラメチルノン6)のような非忌避性の食毒剤においても結果として摂食忌避が起こりうるとしている。 八硼酸二ナトリウム四水和物(DOT)は非忌避性かつ遅効性とされている。DOT粉剤を混合した砂を用いた穿孔試験では, 地下棲息性シロアリの穿孔行動は阻害されなかったが, 死亡虫は多かった9)。DOT粉剤は土壌処理用の製剤としては使われていないが, 木材や木質製品の予防や駆除処理に使われている10)。加圧注入処理もしくは拡散処理で保存剤処理した際に期待される効果は, 摂食防止である。しかしながら, 比較的高濃度のDOT処理でも, 表面への少量の食害は起こりうる。Graceら5)は, 目標吸収量1.02%BAEでDOTを加圧処理した木材を23週間イエシロアリの野外コロニーに設置すると, 質量減少量は2.5%であったものの, ある程度の美観上のダメージは起こる事を示している。この“tasting”行動が繰り返され累積した場合の効果を更に調べるために, Grace and Yamamoto4)は種々の高濃度DOT処理材を4個のイエシロアリコロニーに各々10週間ずつ設置した。過去の研究と同様に, 40週間後の重量減少は最高濃度である2.52%BAE処理材では1%以下であったが, 10週経過後にはいずれも表面への摂食が認められた。高濃度DOTでは, 処理材のすぐ近くで死亡することにより他の採餌シロアリへの忌避が起こった, と著者らは推察している。 本研究の目的は, シロアリが処理材を見つける行動と, AWPAでの規定濃度11)処理した材への忌避がnecrophobiaやassociative learningによるものかどう硼酸塩処理材に対する地下棲息性シロアリの行動翻訳:京都大学生存圏研究所 藤本 いずみBehavior of the Formosan Subterranean Termite (Isoptera: Rhinotermitidae) in Response to Borate Treated WoodCory E. Campora1 and J. Kenneth Grace21NAVFAC Pacic, Natural Resources Branch, 258 Makalapa Drive, Suite 100, Pearl Harbor, HI 96860, USA2College of Tropical Agriculture and Human Resources, University of Hawaii at Manoa, 3050 Maile Way, Honolulu, HI 96822, USA, kennethg@hawaii.eduProceedings of the Hawaiian Entomological Society 2007 39: 127–137

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