しろありNo.165
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17Termite Journal 2016.1 No.165研究トピックスResearch Topics1.はじめに 海外からの木材輸入が丸太から製品へと大きくシフトし続ける中, 乾燥木材害虫の侵入・拡大リスクが高まりつつある。特にヒラタキクイムシ類とナガシンクイ類は, 世界的にも経済的な重要性が高い害虫である。これらは熱帯に多くの種類が分布し, 辺材を含む熱帯産広葉樹材製品によって持ち込まれる可能性がある。事実, 西日本では, 従来最重要種であると考えられていたヒラタキクイムシからアフリカを原産とするアフリカヒラタキクイムシへの種の変化が生じつつあることが知られている1)。 タバコシバンムシなど多くの家屋害虫では, フェロモンを用いたモニタリング技術が確立している。しかしながら, ヒラタキクムシ類などの乾材害虫においては, 今だモニタリングによるリスク評価と予防的取り組みは行われていない。一方, アフリカヒラタキクイムシの観察から, 集合フェロモンの存在を示唆する行動が観察された。 本研究では, 外来木材害虫アフリカヒラタキクイムシにおけるモニタリング技術の開発を目指し, 集合フェロモンの同定を試みた2)。2.実験方法2.1 供試虫 京都大学生存圏研究所・居住圏劣化生物飼育棟(DOL)において継代飼育中のアフリカヒラタキクイムシ(Lyctus africanus Lesne)成虫を使用した。実験には羽化直後の雌雄の新成虫を用いた。2.2 集合フェロモンの抽出と集合フェロモン活性の評価 集合フェロモンの抽出は, 雌雄新成虫をヘキサンに浸せきすることにより行った。こうして得られた粗抽出物の集合フェロモン活性を, 2択選択試験によって評価した。 直径9cmのガラスシャーレにろ紙を敷き, 図1に示す様に2個の抗生物質検定用ペーパーディスクをセットした。この2個のディスクについて, 雌雄成虫の粗抽出物による処理とヘキサンのみによる処理を行い, 下部中央のマーク位置に雌雄成虫20個体を放虫して, その行動を観察した。評価は, 放虫15分後にディスクへ集合した個体数を測定することによって行った。2.3 集合フェロモンの同定 雌雄成虫ヘキサン粗抽出物を用い, ガスクロマトグラフィ-マススペクトルメトリー(GC-MS)による活性物質の同定を行った。3.結果と考察3.1 粗抽出物の集合フェロモン活性 2択選択試験の結果, 雄成虫ヘキサン粗抽出物が, 雌雄成虫に対して明瞭な集合フェロモン活性を示すことが明らかとなった。3.2 集合フェロモンの同定 雄成虫ヘキサン抽出物のGC-MS分析の結果, 3種(図2の①~③)のエステル化合物が特異的に存在することが明らかになった。合成した標品のマススペクトルとの比較により, これらの化合物は以下の通り同定された。なお, 化合物②については, 天然物としては外来木材害虫アフリカヒラタキクイムシの集合フェロモン京都大学生存圏研究所 Titik Kartika成虫放虫位置↓ペーパーディスク図1 ペーパーディスクを用いた2択選択試験による  集合フェロモン活性の評価。

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