しろありNo.165
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4Termite Journal 2016.1 No.165木材内部の空隙の増加に伴い, 伝搬時間が増加し, 結果として, 伝搬速度が低下する。なお, 含水率計(ケット科学研究所製, HM-520)を用いて試験体表面で計測した試験時の含水率は, 約10%であり, ばらつきはほとんどなかった。 本研究では, 食害材の空隙体積を測定するために, 大型X線CT装置(エクスロン・インターナショナル社製, Y.CT Modular320 FPD)を用いて, 試験体をまとめて断層撮像を行った(図7)。撮像条件は, 管電圧160kV, 管電流1.5mA, 分解能0.3mmとした。各試験体のCT画像データは, CT画像解析ソフトウェア(Volume Graphics社製, VGStudio MAX 2.0)を用いて3次元化し, 食害材の木材実質から, 空隙部分の抽出を試み, 空隙体積の測定を行った(図7)。 それぞれの試験体について, 食害による空隙体積から, 以下の4種類((a)~(d))の空隙率を算出した(図8)。空隙率(%)=空隙体積/食害材全体の体積×100(a) 試験体全体(1200mm) (b) 曲げモーメント一定区間(中央部分360mm)(c) 材せい方向に中央部分360mmを5分割(d) 長さ方向に中央部分360mmを6分割 なお, (d)についは, 6分割して求めた空隙率のうち, 最大値を用いることとした。 断層撮像後, 試験体は曲げ試験に供した。試験は, Instron製材料試験機を用いて, スパン1080mmの3等分4点曲げで行った(図9)。本研究では, 実際の建築物でアメリカカンザイシロアリの被害が最も多い小屋裏を想定した場合, 梁や桁に心持ち材が使用されることが多く, 必ず木表が引張り側になるため, 木裏側から荷重を加えた。試験時の測定項目は, 荷重と中央たわみおよび支点のめり込み変位であり, 曲げ破壊試験により, 曲げ強度を導出した。なお, 断面係数は, 断面形状が長方形で, 内部は一様であるとし, 試料の外形寸法を用いて算定した。3.2 結果と考察 53体の試験体について, 3次元画像より測定した試験体1200mmの空隙率はほとんどが30%以下であり, 食害が最も激しい試験体で45%程度であった。本試験において, 図10のように, 縦振動法によって求めた動的な縦弾性係数は, 曲げ強度と高い正の相関がみられた。また図11のように, 容積密度も曲げ強度と高い正の相関がみられた。木材の生物劣化の診断に用いられる超音波伝搬速度は, 健全材では繊維方向で約5000m/sであるが, 生物劣化による木材の密度低下や空洞化によって, 伝搬速度が低下する11, 12)。図12のように, 超音波伝搬速度は, 曲げ強度と正の相関はみられるものの, ばらつきが大きく, 食害による部分的な空隙の影響により, 測定箇所によっては繊維方向に空隙がなければ, 健全材と同様の速度で伝搬することも推察された。また, 空隙の存在により試験体の見かけの密度が低下することによって, 曲げ強度は低下するものの, 超音波の伝搬には影響しないこともあると推測された。 図13のように, 試験体全体(1200mm)の空隙率(図8(a))と曲げ強度の関係は, 負の相関は見られるもののばらつきが大きくなった。これは, 空隙率0%に近い試験体(アメリカカンザイシロアリ食害がほとんどみられない健全材)間でも, 曲げ強度が異なる傾向があり, スギ試験体間での強度のばらつきが影響していると考えられる。本試験において, 支点部に激しい食害が存在する場合, 曲げ試験に供することが不可能であるため, 図7 16試験体のCT画像(右)と空洞部分体積の測定(左)図8 空隙体積より算出した4種類の空隙率図9 曲げ試験方法

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