しろありNo.166
15/69

11Termite Journal 2016.7 No.16611こと。・車両などによる輸送が比較的容易な場所にあること。 さらに主として, 高齢者, 障害者, 乳幼児等の要配慮者を滞在させる福祉避難所等については, 上記の用件の他に, ・要配慮者の円滑な利用を確保するための措置が講じられていること。・災害時に要配慮者が相談し, 支援をうけることができる体制が整備されていること。・災害時に主として要配慮者を滞在させるために必要な居室が可能な限り確保されること。が必要となる。 指定緊急避難場所は災害種毎に指定されるが, この災害種(政令で定める異常な現象の種類)は洪水, 崖崩れ・土石流及び地滑り, 高潮, 地震, 大規模な火災及びその他の異常な現象の7種類がある。 津波に対する指定緊急避難場所は津波から安全な区域内にあるか安全な区域外にあっては, ・被災者等を受け入れる適切な規模・津波により支障のある事態を生じない構造・耐震性がある・想定される津波の水位以上の高さに避難スペースが配置され, そこまでの避難上有効な階段等があるの条件を全て満たしている必要がある。また, 地震に対する指定緊急雛場所では, 地震が発生し, 又は発生するおそれがある場合に使用する施設又は場所にあっては, つぎに掲げる基準のいずれかに適合するものであることとされ, ・当該施設が地震に対して安全な構造のものとして内閣府令で定める技術的基準に適合するものであること。・当該場所又はその周辺に地震が発生した場合において人の生命又は身体に危険及ぼすおそれのある建築物, 工作物その他のものがないこと。これら指定緊急避難場所と指定避難所は, 相互に兼ねることができるとされている。 以上のように災害時の指定避難所は重要な機能が求められており, その建物が健全に維持されていることがとりわけ重要である。そのため, 四国地区しろあり対策協会が実施している指定避難所の蟻害・腐朽調査は大きな社会的意義を有しているものと言える。3.調査方法 調査対象の指定避難所は住宅規模の在来軸組構法の木造建築物がほとんどであることから, 蟻害及び腐朽の検査診断は(公社)日本しろあり対策協会の協会版「蟻害及び腐朽の検査診断手法」, 「既存住宅のシロアリ被害検査・診断マニュアル」に従って実施される。検査診断の全体的な手順は検査対象建物の概要, 特徴等について劣化検査に先だって事前検査を行い, 次に建物の外観, 内観の目視観測, 重点個所の検査を実施することになっている。1)事前検査 建物概要(所在地, 敷地状況, 規模, 構造形式など), 補修・改修履歴, 防腐・防蟻歴, 各部の高さ(基礎高さ, 床高さなど), 各部構造・仕上げ, 敷地・床下環境, 雨漏り・水濡れ箇所とその状況, 各部不具合箇所とその状況(羽アリの発生状況, 基礎・外壁のひび割れなど)について目視, 聞き取り調査を行い, その後の本格的な検査の重点対象箇所の目安とする。2)建物全体の変状検査 壁の波打ち, 壁のねじれ, ふくれ, 開口部の変形, 床の振動・床鳴りなどについて, 目視を中心に行う。3)1次蟻害・腐朽検査診断 「事前検査」「建物全体の変形検査」の結果を踏まえ, 以下の部位について目視により蟻害・腐朽検査を行う。・建物外周囲 戸袋, 濡れ縁, 物置・倉庫など・建物外壁等 開口部を含む外壁木部, 軒裏など・「室内」壁, 床, 建具, 家具など・「小屋組み・天井」梁, 桁, 母屋, 垂木, 天井裏部材 など・「床下」柱脚部, 筋かい下部, 土台, 各種床組材, 基 礎, 束石, 床下土壌など4)1次蟻害・腐朽検査の診断対象と方法 診断対象:蟻害(ヤマトシロアリ・イエシロアリ・アメリカカンザイシロアリ), 腐朽, カビ, 変色の兆候・範囲・程度・湿気・通風状況など。診断方法:蟻害腐朽箇所は非破壊検査(目視, 打診, 触診, 圧入検査等)腐朽環境については, 湿度計, 含水率系など計測機器を用いることもある。5)報告検査結果と対応措置の必要性の有無について報告書を作成する。図1〜図8に報告書の一例を示す。

元のページ  ../index.html#15

このブックを見る