しろありNo.166
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33Termite Journal 2016.7 No.16633・日本におけるヤマトシロアリ属での外部寄生菌の発見 (Ectoparasite fungi species found on subterranean termite Reticulitermes spp. in Japan) Ikhsan Guswenrivo (Kyoto University, Japan) 日本では, ヤマトシロアリ属は重要害虫の一つであり, 木造建造物を加害する。その防除のためには, 化合物処理や物理的防除の様々な防除方法が用いられている。合成殺虫剤の過剰な処理は環境への影響や抵抗性の問題が起こる可能性がある。そこで, 50年以上も前から菌類を用いた生物防除資材の研究が報告されているが, 外部寄生菌についての研究はない。全世界で20種程がシロアリの寄生菌として知られている。本研究は, 日本のヤマトシロアリ属に寄生する種類を調べ, 外部寄生菌のシロアリ防除資材としての可能性を検訂したものである。本調査は日本における初めての全国的調査である。国内17ヶ所(沖縄県から北海道)にて2~5コロニーを採集した。営巣された枝等を持ち帰り, 職蟻500頭と兵蟻20頭を小分けし, 観察する2時間前に冷凍した。顕微鏡下で外部寄生菌の有無を調べた結果, Laboulbeniopsis termitarius, Antennopsis gallica, Termitaria sp.の3種の菌が広く認められた。これらの菌は寄主の活動が低下する等の悪影響はあるものの殆ど病因にはならないが, 経時的に死に至ることもあるとされている。したがって, これらの菌はシロアリ防除資材としての可能性がある。・ノビフルムロン・ベイトを用いた地下シロアリの防除例 (Case studies of controlling subterranean termites using noviumuron baits)Changlu Wang (Rutgers University, USA) 米国でベイト剤が最初に上市されたのは1994年で, たちまちシロアリ防除の主流となった。この方法は液剤処理より遥かに使用薬剤量が少ない。ここでは, ノビフルムロン・ベイトによりReticulitermes avipesのコロニーが消滅した2例を紹介する。さらに, 現行のベイト法の課題についても検討する。・イエシロアリのトランスクリプトーム解析 (Transcriptome analysis of the Formosan subterranean termite, Coptotermes formosanus Shiraki (Isoptera: Rhinotermitidae)Wenjing Wu (Guangdong Institute of Applied Biological Resources, China) イエシロアリは, 世界で経済的に最も重要な害虫の一つである。サンガー法による古典的なシーケンシングに基づいたトランスクリプトーム解析がこれまでに行われているが, 次世代シーケンシングの結果を用いたトランスクリプトーム解析はまだ行われていない。職蟻, 兵蟻および生殖虫のcDNAライブラリーを構築し, トランスクリプトーム解析に使用した。トータル11.02 GBのシーケンシング結果は189,421のunigeneデータベースと一致し, その平均長とN50長はそれぞれ629bpと974bpであった。さらに, 61,407がNCBI非重複性タンパク質データベースと符合した。35%の非重複性unigeneは共生細菌Tcichomonas vaginalisに由来し, また, 16,552のunigeneは, 遺伝子オントロジーにおける2,208の生物学的プロセス, 511の細胞の構成要素および1,276の分子機能に分類された。Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes pathway databaseによれば, 16,444のunigeneは221のpathwayにマッピングされた。9,054のSSRマーカーが同定され, そのうちモノヌクレオチド由来が42.42%, ジヌクレオチド由来が29.20%であった。これらのデータは, 地下シロアリに関する最も網羅的な遺伝子シーケンス情報であり, 次世代シーケンシングが, 全遺伝子情報がまだ得られていない生物のトランスクルプトーム研究と遺伝子発現解析に非常に有用であることを示している。・アメリカカンザイシロアリの市販材6種に対する営巣嗜好性 (Nest founding preference of the western drywood termite, Incisitermes minor against six commercial timbers)S. Khoirul Himmi (Kyoto University, Japan) 自然条件におけるアメリカカンザイシロアリの営巣場所の嗜好性を調査した。日本産材3種(ヒノキ, カラマツ, スギ)と米国材3種(ベイマツ, ベイスギ, トウヒ)を各80本用いた。全ての木材は50×50×300㎜の大きさで, 辺材と心材を含んでおり, 和歌山県において激しい被害を受けている家屋4軒の屋根裏にランダムに設置した。木材は, 一端を接触(CG)させ他端は1㎝程度離して(OG)設置した。2012~2015年, 群飛時期から2ヶ月後の11月に毎年観察を実施した。総計344個の巣が創成され, そのうち群飛した翅蟻によるものが99.1%, 既コロニーからの移動が0.9%であった。巣創成時の嗜好性は, ヒノキ>トウヒ>ベイスギ>スギ>ベイマツ>カラマツの順であった。79.8%は辺材から侵入を受け, 残りは心材16.0%, 境界では4.2%

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