しろありNo.166
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55Termite Journal 2016.7 No.166554.まとめ 現在, 木造住宅で木材処理に使用されている3薬剤について集団食害試験を行った。蒸煮木材を各溶液に1分間浸漬処理し, 試験木材とし, イエシロアリの飼育営巣に設置し, 食害試験を2週間実施した。ピレスロイド系とネオニコチノイド系については, 試験木材の食害は殆ど食害が無かった。ホウ酸塩については, 処理木材が著しく食害された。1日目からAE事象が発生し, 処理木材が食害されたことから, ホウ酸塩には今回実施した試料処理量では, シロアリに対する忌避性、喫食阻害がないと判断した。また, ホウ酸塩で処理した木材表面を食害した職蟻は動きが緩慢になり, 死骸も発生したが, 食害は進行した。ホウ酸塩により一部の職蟻は死滅したが, イエシロアリ営巣の活性に影響を及ぼすことはなかった。 比較材として蒸煮木材と杉材についても試験を行った。蒸煮木材は著しく食害された。杉材は, 無処理であるにも関わらず, 僅か食害されただけであった。杉材をイエシロアリが忌避することも確認された。 集団食害試験は, イエシロアリ営巣の飼育が確立されたことで可能となった試験であり, イエシロアリの被害現場を模擬した試験である。 今回実施した集団食害試験では, ピレスロイド系薬剤とネオニコチノイド系薬剤で処理した蒸煮処理木材は殆ど食害が無く, 両薬剤とも十分な防蟻性能を有していることを確認した。一方, ホウ酸塩で処理した蒸煮木材は, 無処理の杉材よりも著しく食害されことを報告する。引用文献1)廣瀬博宣(2015):イエシロアリ飼育営巣とAE検出器を用いたホウ酸塩製剤の防蟻効力確認試験報告, しろあり, 163, 31–47.2)廣瀬博宣(2015):正誤表, しろあり, 164, 53.c.AE検出器の活用 集団食害試験にAE検出器を併用することで, 試験中の食害傾向, 食害の推移を定量把握することが出来る。特に, AE発生数のピーク確認から, 無処理試験木材の著しい食害を推定し, 試験の中止, 試験期間の短縮も可能である。短期間の試験は, 飼育営巣の負荷軽減に繫がり, 飼育営巣にも有益である。飼育営巣を使用した食害試験では, AE検出器の併用がより望まれる。4)試験木材別質量減少率(食害率) 設置前の試験木材重量と, 撤去乾燥後の試験木材重量から, 各試験木材の質量減少率を求めた。 各試験木材の質量減少率を表4に示す。また、各試験木材の平均質量減少率を表5に示す。平均質量減少率はピレスロイド系試験木材で0.6%, ネオニコチノイド系試験木材で0.6%, ホウ酸塩試験木材で81.0%, 比較材としての蒸煮木材は94.1%, 杉材は3.1%であった。表3 試験木材別AE総発生数試験木材名称グループAグループBグループC合 計ピレスロイド系0000ネオニコチノイド系62210ホウ酸塩12,38958.394107,481178,264蒸煮木材30,573108,50572,085211,163杉 材193,18012,02815,227合 計42,987170,081191,596404,664表4 試験木材別質量減少率試験木材名称グループAグループBグループCピレスロイド系0.6%0.4%0.7%ネオニコチノイド系0.5%0.7%0.5%ホウ酸塩80.6%86.7%75.7%蒸煮木材96.7%93.0%92.6%杉材0.8%3.4%5.0%表5 試験木材別平均質量減少率試験木材名称平均薬剤処理量g/㎡平均質量減少率%ピレスロイド系薬剤処理木材(ペルメトリン 0.2%溶液)79.40.6ネオニコチノイド系薬剤処理木材(クロチアニジン 0.075%溶液)89.10.6ホウ酸塩処理木材(八ホウ酸二ナトリウム四水和物 15%溶液)81.381.0蒸煮木材−94.1杉材−3.1

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