しろありNo.166
7/69
3Termite Journal 2016.7 No.1663を受けたものなどがみられた。ただし, 倒壊している建物が多いために, どれくらいの割合で生物劣化があったかなどは, わかっていない。シロアリ防除業者がどれくらいの頻度でシロアリ被害への対応をしているかなどを元に, 被害の度合いなどがわかると今後の調査や評価にもつながるかもしれないため, 様々な検討をされることを切に期待する。また, 毎回必要と思われながら検討が進んでいない項目として, 大壁のために柱や土台などの部材の生物劣化がわからないことが挙げられる。そのため, シロアリ防除業者と建築設計や施工の方が協同で, どれくらいの被害で部材としてはどの程度の残存性能を有しているかなどについて, 評価できるようなシステムを確立することができればと考える。4.調査の行程及び被害状況 調査日は5月6日であり, 宿泊地であった久留米市から熊本市へ九州自動車道にて向かったところ, 写真1から写真2に示すように屋根にブルーシートがかかっている様子が見られ, 熊本市, 特に益城熊本空港ICに近づくにつれて増えていく傾向がみられ, 震源地に近くなっていることが感じられた。そのまま益城町を通り過ぎ, 最初の調査地とした熊本市川尻地区へと向ったが, 離れていくにしたがってブルーシートの数も減っていった。 川尻地区においては, 多くは重い屋根の被害と旧耐震の古い建物の壁の脱落などの被害であった。特に, 2箇所で話を聞くことができたので, 紹介する。河尻神社および住居:神社の建物では, ほとんどの扉が外れるなどの被害があったそうだが訪れた際には修復が終わっており, わずかに瓦の被害がみられた(写真3)。築100年以上の住居では, 1970年代に一部を改築, 1985年にモルタル壁, 1995年に瓦の葺き直しなどをおこなっていた。今回の地震では母屋の土壁にはクラックが入り(写真4), 瓦も一部外れるなどの被害を受けていた。1940年代に立てられた住居:1980年代に増築された二階建ての木造住宅であり, 旧建物の横に並行して建てられていた。被害のほとんどは, 旧建築部分にみられ, 外観の土壁のクラック(写真5), 内部の損傷として土壁の脱落(写真6), 床束がずれたことによると考えられる床の不陸があった。また, 建て増し部と旧建築部分の境界に大きな隙間が生じており, この隙間からの雨の侵入がひどいとのことであった。住み手からは, どんな揺れだったかは覚えておらず, 二階から一階にどのようにして逃げたかも覚えていないとの話を聞くことができた。また, 周囲の住宅においても, 主に本震による被害であるとの説明があった。 嘉島町においては, 川尻より比較的被害が大きく(震源に近づいているためか, 地盤の問題かはわからない), 全壊の建物も複数見られた。調査地域において被害を受けている建物は, 旧耐震の建物ばかりであり, 新耐震以降と思われる建物については無被害または被害が小さいように思われた。光恩寺:本堂および母屋に大きな被害がみられた(写真7)。本堂ではシロアリの被害(写真8)や腐朽の被害などがみられた。また, この生物劣化による被害がこの建物の被害を大きくした直接的な原因かは判断できなかったが, 本堂の表にある大きなひさしを支える腕木の付け根付近であったために, 留め付けが緩くなるなどの状態であった可能性はあると思われる。この地域では先に述べたように, 古い住居の被害が多くみられ, 非住宅においても同様であった。写真9から写真11に, 典型的な被害を示す。住宅も開口の方向や建物の壁の入っている向きなどによって被害が異なっているように思われた。また, 写真11の建物の柱脚部に甲虫類の被害がみられたので写真12に示した。 熊本市中央区(熊本城周辺)においては, 中心街ということで中層のビルが多く, 木造住宅はそれほど多くなかった。被害としてはビルやマンションのタイルの剥離が多くみられ, 加えて, ピロティーの柱に小さな亀裂がみられた(写真13)。また, 熊本城には入ることができなかったが, 塀が大きく崩れている様子が確認された(写真14)。また, S造の建物の被害もみられた(写真15)。加えて, 木造3階建てのアパートでは蟻害がみられ(写真16および写真17), 町中においてもシロアリを含む生物劣化の被害(写真18)があることが確認された。なお, ここではイエシロアリ, ヤマトシロアリの区別なくシロアリと評するが, 実際に生きたシロアリが確認できなかったために, このように記載したことを申し添える。 益城町においては, 震度7を2度記録したこともあって, 今回調査したどの地区よりも被害が激しかった。全壊や半壊の建物も多くみられ, またこれまでの地域と異なり, 地盤の被害も多くみられた。そのため擁壁の崩壊などにより, 建物が傾いているものなどもみられた。ここでは, 2箇所で話を聞くことができたので, その情報も織り交ぜて, 報告する。住宅1は, 二階建て木造住宅で, 瓦が落ちる, 壁に亀裂が入るなど
元のページ
../index.html#7