しろありNo.167
10/73

6Termite Journal 2017.1 No.1676が重要であると考えられる。 ドーパミンは, 神経伝達物質, 神経修飾物質, 神経ホルモンとして, 主に中枢神経系で機能することが知られる35)。昆虫では, Tyrosine Hydroxylase(TH)によりチロシンからL−ドーパが作られ, Dopa decarboxylase(DDC)によりドーパミンが合成される36)(図4a)。 さらにドーパミンは, N-acetyltransferase(NAT)によりN−アセチルドーパミンへと代謝される37)。トノサマバッタLocusta migratoriaでは, 群生相を示す個体にチロシンL-ドーパドーパミン N-アセチルドーパミンドーパ デカルボキシラーゼ(DDC) チロシンヒドロキシラーゼ(TH)N-アセチルトランスフェラーゼ(NAT)(a) (b) pmol / 2個体 (6)(6)0日目 3日目(c) 相対発現量 a b b a ab b No. 1 No. 2 No. 1の脳内ドーパミン量 p = 8.66E-03 DDC 0-12-34-50-12-34-5脱皮からの日数 図4 (a)ドーパミン合成および代謝経路。(b)No.1の脳内ドーパミン量(平均値 ± S.D.)(Yaguchi et al. 2016を元に作図)。2個体分の脳を1サンプルとしており, カッコ内の数字はサンプル数を示す。3日目の方が0日目よりも有意に多いことが示された(Welch's t-test, p < 0.05)。(c)No.1およびNo.2の脱皮後0−1, 2−3, 4−5日目におけるDDCの発現パターン(平均値 ± S.D., n = 6)(Yaguchi et al. 2016を元に作図)。内部標準遺伝子には, リボソームタンパク質遺伝子(RPL13A)を用い, No.1の脱皮後0−1日目を1としたときの相対発現値を示している。各カラム上の異なるアルファベットは, 有意差があることを示す(one-way ANOVA followed by Tukey’s test, p < 0.05)。ドーパミン受容体の阻害薬(アンタゴニスト)を注入することにより, 孤独相への移行が誘導される38)。ワモンゴキブリPeriplaneta americanaの雄成虫にドーパミン受容体アンタゴニストを注入すると, グルーミング行動が減少する39)。膜翅目昆虫においても, ドーパミンの役割に関する報告例がある。例えば, トゲオオハリアリDiacamma sp.において, 繁殖虫へ分化する予定個体の脳内ドーパミン量は, 職蟻ヘ分化する予定個体より有意に多い40)。また, クロヤマアリFormica

元のページ  ../index.html#10

このブックを見る