しろありNo.167
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11Termite Journal 2017.1 No.167龍谷大学大学院理工学研究科現所属:クラボウ工事サービス株式会社 木村 秀平森林の元素循環におけるシロアリの役割- 「龍谷の森」を対象として -報文Reports1.はじめに シロアリは, 直接的な腐食連鎖以外にも, その活動によってまわりの環境に大きな影響を与える生物であり, ミミズ, アリなどとともに, 「エコシステム・エンジニア」 と呼ばれる。そして, 熱帯においては, 存在量が多いため, 土壌分解者の中でも重要な生物として位置づけられている。一方で, 温帯においては分布する種が少なく, また, 存在量も熱帯に比べて劣るために, 木造住宅の害虫として認知されているものの, 森林内における生態学的役割については, あまり注目されず, 理解されていない。しかし, 温帯である日本におけるシロアリの存在量は, 熱帯には及ばないももの, シロアリが森林, 都市部に関係なく亜熱帯林と同程度存在する可能性が高く, また, 木質資源を選択的に分解する数少ない大型土壌分解者であることから, 温帯森林においてもシロアリの役割は重要であると考えられる。そこで本研究では, 温帯森林環境内の元素循環におけるシロアリの役割を明らかにすべく, 日本において最も広く分布するヤマトシロアリを対象とし, 滋賀県大津市, 京都府宇治市および鹿児島県日置市のいくつかのランドスケープにおいて生息量の推定や各種調査・分析を行った。本報告では, 滋賀県大津市に位置する龍谷大学「龍谷の森」から得たサンプルの元素分析結果を報告する。2.試料と方法2.1 野外試験地を用いたサンプリング 滋賀県大津市瀬田大江町の龍谷大学瀬田キャンパスに隣接する「龍谷の森」内の植生の異なる4ヶ所を試験地として選定し, それぞれ「アカマツ試験地」, 「ヒノキ試験地」, 「コナラ試験地」, 「アカマツ・ソヨゴ試験地」とした。 本研究で各試験地に設置したサンプリングトラップは, シトカスプルース Sitka spruce(Picea sitchensis)の餌木(3cm×3cm×長さ30㎝)2本を頭5cm残して土壌に埋め込んだ後, その周りを計4箇所の通気口を開けた塩化ビニール製のパイプで囲み, 上部はプラスチック製のふたを被せて作成した(写真1(左))。そして, 2014年5月に4つの試験地すべてにおいて, 22m×6mの調査区の中に50個のサンプリングトラップを2m間隔で設置した(写真1(右))。 サンプリングトラップ設置から半年後の2014年11月に, 設置したすべてのサンプリングトラップに対して調査を行った。その結果, アカマツ試験地で50個中8個, ヒノキ試験地で50個中13個, コナラ試験地で50個中4個, アカマツ・ソヨゴ試験地で50個中7個のサンプリングトラップにおいてシロアリの存在が確認できた。シロアリの存在が確認されたサンプリングトラップに対して, シロアリ, 餌木に付着した蟻土, トラップ写真1 サンプリングトラップ(左)とアカマツ試験地における設置の様子(右)
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