しろありNo.167
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21Termite Journal 2017.1 No.167した住み替え需要の喚起により, 多様な居住ニーズに対応するとともに, 人口減少時代の住宅市場の新たな牽引力を創出することが求められている。 既存住宅が資産となる「新たな住宅循環システム」の構築のためには, 以下の施策の総合的な実施が求められる。 ① 建物状況調査(インスペクション), 住宅瑕疵保険等を活用した品質確保 ② 建物状況調査(インスペクション)における人材育成や非破壊検査技術の活用等による検査の質の確保・向上 ③ 住宅性能表示, 住宅履歴情報等を活用した消費者への情報提供の充実 ④ 内装・外装のリフォームやデザインなど, 消費者が住みたい・買いたいと思う既存住宅の魅力の向上 ⑤ 既存住宅の価値向上を反映した評価方法の普及・定着 既存住宅の資産価値を高める前提条件になる, 耐震, 断熱・省エネルギー, 耐久性能等に優れた長期優良住宅等の良質で安全な新築住宅の供給が要請されている。加えて, 資産としての住宅を担保とした資金調達を行える住宅金融市場システムの整備・育成が求められる。2.4 建替えやリフォームによる安全で質の高い住宅ストックへの更新 約900万戸ある耐震性を充たさない住宅の建替え, 省エネ性を充たさない住宅やバリアフリー化されていない住宅等のリフォームなどにより, 安全で質の高い住宅ストックへの更新と, 多数の区分所有者の合意形成という特有の難しさを抱える老朽化マンションの建替え・改修を促進し, 耐震性等の安全性や質の向上を図る必要がある。そのための基本的な施策には (1) 質の高い住宅ストックを将来世代へ承継するため, 耐震性を充たさない住宅の建替え等による更新 (2) 耐震化リフォームによる耐震性の向上, 長期優良住宅化リフォームによる耐久性等の向上, 省エネリフォームによる省エネ性の向上と適切な維持管理の促進 (3) ヒートショック防止等の健康増進・魅力あるデザイン等の投資意欲が刺激され, あるいは効果が実感できるようなリフォームの促進 (4) 密集市街地における安全を確保するための住宅の建替えやリフォームの促進策を検討 (5) 民間賃貸住宅の計画的な維持管理を促進するため, 必要となる修繕資金が確保されるための手段を幅広く検討 (6) リフォームに関する消費者の相談体制や消費者が安心してリフォーム事業者を選択するためのリフォーム事業者団体登録制度の充実・普及 (7) マンションに関しては, 総合的な施策を講じることにより, 適切な維持管理や建替え・改修等の促進がある。2.5 急増する空き家の活用・除却の推進 住宅ストックの視点から, 空き家を賃貸, 売却, 他用途に活用するとともに, 計画的な空き家の解体・撤去を推進し, 空き家の増加を抑制し, 地方圏においては特に空き家の増加が著しいため, 空き家対策を総合的に推進し, 地方創生に貢献することが求められる。そのため, (1) 良質な既存住宅が市場に流通し, 空き家増加が抑制される新たな住宅循環システムの構築 (2) 空き家を活用した地方移住, 二地域居住等の促進 (3) 伝統的な日本家屋としての古民家等の再生や他用途活用を促進 (4) 介護, 福祉, 子育て支援施設, 宿泊施設等の他用途への転換の促進 (5) 定期借家制度, DIY型賃貸借等の多様な賃貸借の形態を活用した既存住宅の活用促進 (6) 空き家の利活用や売却・賃貸に関する相談体制や, 空き家の所有者等の情報の収集・開示方法の充実 (7) 防災・衛生・景観等の生活環境に悪影響を及ぼす空き家について, 空き家等対策の推進に関する特別措置法などを活用した計画的な解体・撤去を促進などが基本施策となる。 国立社会保障・人口問題研究所の将来推計によると, 総世帯数は2020年の5,305万世帯をピークに, 2025年には5,244万世帯に減り, その後も減少が見込まれている。空き家率の上昇を抑えるためには, 世帯数の減少に応じて, 総住宅数も減らしていく必要がある。 国土交通省の平成26年度「住宅着工統計」によると, 2014年度の新設住宅着工戸数は88万戸で, 5年ぶりに減少に転じ, 2030年度までに新設住宅着工戸数が53万戸に減少すると見込まれている。新設住宅着工戸数の減少を上回るスピードで世帯数の減少が見込まれてい

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