しろありNo.167
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24Termite Journal 2017.1 No.167担保責任を十分に果たすことができない場合, 住宅購入者等が極めて不安定な状態におかれることが明らかになった。 このため, 住宅購入者等の利益の保護を図るため, 「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(平成19年法律第66号)(住宅瑕疵担保履行法)」が制定されている。瑕疵担保責任を負うのは建設業者及び宅地建物取引業者である。 一方, 中古住宅についての瑕疵担保責任は品確法においても, 住宅瑕疵担保履行法においてもなんら言及されていない。そのため, 中古住宅の購入者にとって瑕疵への対応が不安材料のひとつとなっている。そこで既存住宅に瑕疵があった場合に修繕費用等を補償するために, 住宅瑕疵担保責任保険制度のなかで, 住宅瑕疵担保責任保険法人による任意保険の引受けを可能なものにしている。中古住宅を売買する場合は, 保険期間5年または1年の既存住宅売買瑕疵保険が任意保険の形で利用でき, 保険に加入するにはインスペクションが必須となっている。この既存住宅売買瑕疵保険は, 売り主が宅建事業者の場合と個人間売買の場合で異なる。売り主が宅建事業者の場合は, 宅建事業者が保険に加入する。個人間売買の場合, 保険に加入するのは売主・買主個人ではなく, 検査事業者が加入することになっている。売主・買主が検査事業者にインスペクションと保証を委託し, 検査事業者がインスペクションを行う。インスペクションを行った検査事業者から申し込みを受けた保険法人が, 引き渡し前にインスペクションを行ったうえで保険を引き受けるシステムになっている(図6)。平成26年から既存住宅ガイドラインに基づく講習を受けたものが検査事業者の行うインスペクションを行った場合は, 保険法人のインスペクションは省略されることになっている。5. 既存住宅流通・リフォーム市場の活性化 ストック重視, 住宅の長寿命化の住生活基本法を受けて, 「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」が2009(平成21)年6月より施行された。法律の目的として「現在及び将来の国民の生活の基盤となる良質な住宅が建築され, 及び長期にわたり良好な状態で使用されることが住生活の向上及び環境への負荷の低減を図る上で重要となっていることに鑑み, 長期にわたり良好な状態で使用するための措置がその構造及び設備について講じられた優良な住宅の普及を促進するため, 国土交通大臣が策定する基本方針を定めるとともに, 所管行政庁による長期優良住宅建築等計画の認定, 当該認定を受けた長期優良住宅建築等計画に基づき建築及び維持保全が行われている住宅についての住宅性能評価に関する措置その他の措置を講じる」とされている。 その構造や設備が長期使用構造等に係る要件を備えたものを「長期優良住宅」と定義されている。耐久性(腐食, 腐朽及び摩損の防止)や耐震性(地震に対する安全性)の他, 世帯構成の変化など住宅の利用の状況の変化に応じて構造及び設備が容易に変更できる可変性(間取り等の変更容易性)と維持保全の容易性を確保するための措置が講じられていること, さらにバリアフリー性能(日常生活に身体機能上の制約を受ける高齢者の利便性や安全性の確保)と省エネルギー性能(エネルギーの使用の効率性その他住宅の品質又は性能に関する措置)などが要件で, これを備えた住宅の構造や設備が「長期的使用構造等」とされている。さらに, ここでいう, 「維持保全」とは, 住宅の構造耐力上主要な部分, 雨水の侵入を防止する部分又は住宅の給水若しくは排水設備について, 点検又は調査を行い, 及び必要に応じて修繕又は改良を行うことをいうものとされている。 長期優良住宅は長く存続することから, 計画的に点検, 補修, 交換などの維持保全を行うことが必要になる。そのため, 建設時の設計図書等と併せて維持保全の記録を作成し, 保管されていることが重要である。これらの記録が中古住宅の価格を高めることができ, そのことが維持管理の努力のモチベーションにつながっていくことになる。さらに, 長期優良住宅の認定を受けた者は, 建築及び維持保全の記録, いわゆる住宅履歴書, いえかるて, 家歴書とか言われているものを作成し, 保存しなければならない。これが, 長期優良住宅制度の重要な根幹になっている。 優良な住宅を長期間維持することによって, 建替えコストの削減によって国民の住宅に対する負担の軽減と, 解体に伴う廃棄物の削減によって地球環境への負荷の軽減といった効果が期待されている。長期優良住宅の維持保全に係わる手法や技術は, 必ずしも維持保全や耐久性能に十分な配慮がされていない現在既に存在している中古住宅の性能改善と長寿命化にも反映させることができる。このことは「住生活基本法」のストック重視の住宅政策の基本理念にも合致することになる。 長期優良住宅に係る認定制度は, 新築だけでなく平成21年には, 既存住宅に増改築についても優良性を評価する増改築に係る認定制度が施行されている(図8)。
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