)gm()gm()gµ(/)lomn(ADM/)lomn(量PCAND/)gn(GdHO-8量酸肪脂和飽不総量質クパンタ総量総量QW*QW量W 0.200.160.120.080.0401412108642035302520151050タンパク質傷害量脂質傷害量図5 酸化傷害分子マーカーの比較解析 女王の8-OHdG量とCP量, MDA量はワーカーのものと比較してそれぞれ有意に低かった (t-test)。白い棒グラフがワーカー(W)、黒い棒グラフが女王(Q)を表す。* p < 0.05, *** p < 0.001.(MDA)が知られている。それぞれの指標について, 総DNA, 総タンパク質, 総不飽和脂肪酸あたりの量を測定したところ, ワーカーと比較して女王の8-OHdG量が約3倍, CP量が約2倍, MDA量が約18倍低いことを明らかにした(図5)。これらの結果は, ヤマトシロアリの女王が高い抗酸化酵素活性を有することで, 生体分子であるDNA, タンパク質, 脂質の酸化傷害量を低く抑えていることを示唆する15)。教授には研究室設備の使用などに関して大変お世話になった。また, 松浦健二教授には本誌への執筆の機会を与えて頂いた。本研究の一部は松浦健二教授と井内良仁准教授への日本学術振興会JSPS科研費(No. 25221206, No. 26660113)により行われた物である。末文ながら, 各氏, 各団体に厚くお礼を申し上げる。2)Kirkwood,T.B.L.&Austad,S.N.(2000):Whydoweage?Nature408,233–238.3)Bourke,A.F.G.(2007):KinSelectionandtheEvolutionaryTheoryofAging.Annu.Rev.Ecol.Evol.Syst.38,103–128.4)Harman,D.(1956):Aging:atheorybasedonfreeradicalandradiationchemistry.J.Gerontol.11,298–300.1515******QDNA傷害量参考文献 1)Keller,L.&Genoud,M.(1997):Extraordinarylifespansinants:atestofevolutionarytheoriesofageing.Nature389,958–960.3.3 酸化傷害量 抗酸化システムはROSを消去することで生体分子への酸化傷害を抑制するものである。ここまで示してきた女王の高い抗酸化酵素活性が実際に生体内で機能しているか調べるため, ヤマトシロアリの女王とワーカーの生体分子の酸化傷害量を比較した。核酸(DNA), タンパク質, 脂質における酸化傷害の指標として8-ヒドロキシデオキシグアノシン(8-OHdG), カルボニル化タンパク質(CP), マロンジアルデヒド4. おわりに 近年、分子生物学的手法が発展し, 老化や寿命の分子メカニズムに対する理解を急速に進めてきた。しかし, 主要な研究はマウスやショウジョウバエ, 線虫といった短命なモデル生物を用いて行われおり, 未だ劇的な長寿の分子基盤を理解するに至っていない。そこで, 進化的に長寿であるシロアリの生殖カーストについて, 分子・細胞・個体・社会レベルでの理解を進めていけば, 寿命に関する知見の新しい領域に踏み込むことができるかもしれない。本稿では新しい寿命研究のターゲットとしてシロアリの抗酸化システムを紹介したが, これは彼らの長寿を支える複雑な老化制御機構の一角を露わにしたものでしかない。今後, シロアリの長寿に対するメカニズムの問いについての研究が続けられていくことこそが, 未解明な点の多い寿命や老化といった現象を理解する一つの近道なのではないだろうか。 本稿の作成にあたり, 京都大学の松浦健二教授, 昆虫生態学研究室の皆様, そして山口大学の井内良仁准
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