しろありNo.173
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(×105) (×105)aBaB0BbBbAAbbAAbb0)0101×( )901×( 腸内原生生物個体数量菌アチラセの上紙ろ腸内原生生物個体数量菌アチラセの上紙ろ(a)(b)(c)(d)1.51.00.54.03.02.01.0コロニーAコロニーB6.05.04.03.02.01.004.03.02.01.00セラチア(+)(ー)(+)(ー)腸内微生物(ー)腸内微生物(+)図1  シロアリ腸内微生物によるセラチア菌の抑制効果。(a)セラチア菌に感染して死亡したネバダオオシロアリ。バーは3mm。(b)セラチア菌がろ紙上で増殖すると, ろ紙が赤色に変色するが, (c)セラチア菌の増殖が抑制されている場合ではろ紙は白いままである。(d)プロットはそれぞれの処理区による腸内原生生物総個体数を, 棒グラフはろ紙上のセラチア菌増殖量を表す。バーは標準誤差を表す。異なるアルファベット間で有意差がみられた(ペアワイズt検定, P < 0.00417, ボンフェローニ補正)。19192.4 セラチア菌の成長に酢酸が及ぼす影響 酢酸濃度がそれぞれ48, 24, 12, 6, 3, 0mMのLB液体培地を用意し, セラチア菌を培養し増殖量を定量した。それぞれの培地に10μLのセラチア培養液を加えて, 28℃で4日間振とう培養を行った。セラチア菌量は上記の色素測定法を用いて定量した。2.5 統計解析 原生生物量, ろ紙上のセラチア量, 腸内酢酸濃度についてそれぞれのコロニーにおける処理区間でペアワイズt検定を用いて比較を行った。有意水準αはボンフェローニ法を用いて補正した値を用いた(α=0.00417)。セラチア菌に対する酢酸濃度の影響は, 異なる酢酸濃度下のセラチア菌量を分散分析とTukey法により比較することで明らかにした。セラチア菌量を色素量から推定するために, 線形回帰を用いてCFUとOD540の検量線の式を得た。同様にしてシロアリの腸の体積と生重量の検量線を求めた。これらの解析はR(ver. 3.4.1)を用いて行った。3. 結果 腸内微生物を除去した後にセラチア菌を暴露した処理区(腸内微生物(−)セラチア(+))においては, 他の処理区と比較して多くのセラチア菌がろ紙上で増殖していた(P < 0.004, 図1d)。前者ではろ紙が赤く染まっていたのに対して, 後者ではろ紙は白色のままであった(図1b, c)。抗生物質を与えたシロアリは腸内に全く原生生物を持っていなかったことから, 抗生物質を用いた腸内微生物除去処理は効果的であることが明らかになった(図1d)。A, Bコロニーともに同様の傾向がみられた。 シロアリ腸内の酢酸濃度は原生生物個体数と同様の傾向を示しており, 腸内原生生物を持つシロアリでは腸内微生物除去個体と比べて酢酸濃度が有意に高かった(P < 0.004, 図2)。腸内原生生物を持つシロアリの酢酸濃度はコロニーAでは40〜70mM, コロニーBでは80〜130mMであった(図2)。コロニーAにおいて, 腸内微生物(+)セラチア(+)処理区の個体は, 腸内微生物(+)セラチア(−)の個体よりも腸内酢酸濃度が有意に高かったが, コロニーBにおいては両者の差はみられなかった(図2)。 液体培養実験の結果, 酢酸濃度が12mM, 24mM, 48mMの培養液ではセラチア菌の増殖が強く抑制されていた。一方で3mM, 6mMの酢酸では抑制効果はみられなかった(P < 0.05, 図3)。4. 考察 本研究によって, シロアリの腸内微生物は巣内の日和見感染菌を抑制することで巣内衛生の維持に貢献していることが明らかになった。腸内微生物を除去したシロアリではろ紙上のセラチア菌の増殖を抑制できなかったが, 腸内微生物を持つシロアリはセラチア菌を抑制していた(図1)。腸内微生物除去処理区でセラチア菌の増殖がみられた理由としては, セラチアがシロアリの腸を生きたまま通過し, フンの排泄時に散布されたためであると考えられる。また, 腸内微生物が生産する酢酸はセラチア菌の抑制に十分であることが分かった(図2, 3)。よって, 本研究により腸内共生微生物によって生産された栄養物質である酢酸が, シロアリ巣内衛生の維持にも貢献していることが明らかとなった。 このような酢酸の複数機能はどのように生じたのだろうか。シロアリにとってエネルギー源である酢酸は, 環境中における酢酸の分泌者にとっては競争的な他の

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