しろありNo.173
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環境機器株式会社 川端 健人Presentations at The Research Meeting22際に僅かではあるが部分的な破壊を必要とすることもある。価格や取扱いの面においても課題は残る。 そこで, 非破壊で比較的容易に, かつ効率よく精度の高いシロアリ調査が実施できるための検査機器としてタームレーダー®を開発した。今回は室内試験においてタームレーダーの有効性を検証したので, その一部を報告する。研究発表非破壊型シロアリ検査機「タームレーダー®」について1. はじめに シロアリの生息調査は被害状況の把握や的確な駆除処理を実施する上で非常に重要である。一般的には床下に進入し, 目視により蟻道や蟻土, 蟻害を探す方法が中心であるが, 家屋全体を隈なく見ることは, 壁内やタイル下などでは物理的にも無理な場合が多い。そのため, シロアリの侵入パターンと構造を考慮して, 重要な調査ポイントを中心に調査が実施されているが, その調査精度は蟻害調査の経験とシロアリに関する専門知識に比例する。近年では, 高気密・高断熱住宅や狭小床住宅の増加に伴い, 従来の調査方法だけでは十分な調査が実施できない状況が増えてきた。例えば, 玄関・勝手口におけるシロアリ被害の増加1)や対策の難しい基礎断熱工法の被害2)は, 調査・予防・駆除の面においても大きな問題となっている。また, ヤマトシロアリやイエシロアリのような地下シロアリとは違い, 蟻道を構築せず, 加害部表面に目立った被害兆候を現さないアメリカカンザイシロアリの分布拡大も問題視されている3)。このような被害に対しては, 目視や打診調査だけでは十分に調査ができないことが多いため, 必要に応じて, AE(アコースティック・エミッション)検出器やTermatrac®などの調査機器4), 一部の防蟻会社ではシロアリ探知犬を用いた調査(株式会社アサンテホームページ:https://www.asante.co.jp/)などが従来の調査とともに併用されている。 構造やシロアリの種類の問題だけではなく, 目視や打診調査だけでは施主に対して客観的かつ科学的な説明が難しいため, このような検査ツールは営業的な面で活用されていることもある。実際, 検査ツールを用いた科学的かつ客観的な説明につながるシロアリ生息状況の「見える化」は要望として高い。また, 人手不足問題や作業の効率化, より正確な調査の実施からも簡便かつ迅速な調査が実施できるツールは求められる。 しかし, 現在主流のシロアリ検査ツールは, 検査範囲が非常に狭かったり, もしくは広すぎて生息箇所の特定が困難であったりするものが多い。また, 調査の2. タームレーダーについて タームレーダーはマイクロ波のドップラーセンサーとシロアリ検知に特化した独自アルゴリズムによる高精度フィルタリング技術を応用し, 木材内部等で活動するシロアリの動きを検知する非破壊型のシロアリ検査機である(写真1)。センサー1機では検知範囲が狭いため, センサーを並列に3機搭載することで広範囲に検知できるようにした。マイクロ波は金属や水以外のものは透過するため, 木材内部を加害するシロアリだけではなく, 石膏ボードやタイル, モルタルなどの奥で活動するシロアリも検知できる。内部に生息するシロアリにマイクロ波が当たった際に生じた反射波のズレや大きさを検知し, その結果は専用アプリケーション(Android 5.0以上対応)をインストールしたタブレットやスマートフォンのモニターに表示される。マイクロ波は直進と反射を繰り返すが, そのままの反射波を検知するだけでは, 目的の波長以外のノイズを拾いすぎる。そのため, シロアリによる反応なのか, それ以外の反応なのかの判断が難しく, 誤診へと繋がってしまう。タームレーダーでは, それらをなるべく解消するため, マイクロ波ドップラー式生体バイタルセンサーの心拍・呼吸・体動の周波数をフィルタリングし検出する既存技術(エフ・アイ・ティー・パシフィック株式会社ホームページ:https://www.fitpacific.com/)を応用している。これにより, シロアリの動きに特化した独自アルゴリズムを構築し, その高精度フィルタリング技術により検知精度を高めた。また, 振動センサーも搭載させ, ノイズとなる本体自体の微

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