2828調査報告, しろあり, 171, 1-113 )吉村剛(2011):外来木材害虫アメリカカンザイシロアリの総合的防除に向けた取り組み, 木材学会誌, 57, 329-3394 )簗瀬佳之・森拓郎・Emiria Chrysaniti・吉村剛・大村和香子・板倉修司・藤井義久 (2018):アコースティック・エミッションおよびマイクロ波によるアメリカカンザイシロアリ食害の非破壊検査検出, 環動昆, 29, 41-474-2-5 断熱材(グラスウール・発泡ウレタン) 図4に各断熱材で計測されたTR値を頻度別で示す。グラスウール80㎜では, 200以上の頻度の割合は56.7%となった(表3)。グラスウールの場合, 厚さが80㎜のため試験体までの距離も値に大きく影響しているものと思われるが, 十分に検知可能であった。また, 発泡ウレタン45㎜のTR値200以上の頻度の割合は, 93.3%と非常に高く(表3), 十分に検知可能であると考えられる。5. まとめ タームレーダーの反応はシロアリの個体数, 種類, 障害物となるものの厚さ, 素材に影響されることがわかった。個体数は多いほど検知しやすい結果となったが, たとえ1頭であっても, 活動が活発であれば十分に検知可能であった。また, 反応が低い場合でも, バックグラウンドの値のように, 常に100以下の低い値を連続的に示すのではなく, シロアリの活動状況により200以上の値が5秒間の間に2〜3回ほどランダムに見られたことから, この反応もシロアリ生息状況の判定の参考になると考えられる。こういった反応が確認された場合は, 感度レベルを上げ周辺も同様に検査し, 総合的に生息状況を判断することが必要であろう。これらの結果を受け, モニターに表示されるTR値の閾値は200以上と定めている(200未満の場合は値のみ表示)。 木材に対しては, スギとヒノキに対する評価だけではあったが, 感度レベル5で厚さ50㎜程度は検知可能とわかった。シロアリが生息している木材は内部がシロアリの加害により空洞化しているため, 実際の被害材ではより深部まで生息を検知できるものと思われる。また, 生息個体数や動きの活発具合によっても検知結果は大きく左右される。 木材以外の各種建材に対しては, 石膏ボード, タイル, 断熱材(グラスウール・発泡ウレタン)ともに実際の家屋で使用されている厚さ以上でも十分検知可能であった。つまり, タームレーダーは室内側から大壁造りの壁内や湿式浴室のタイル下のシロアリ生息調査に有効であると考えられる。また, コンクリートでは感度レベル5で厚さ20〜30㎜程度まで検出可能であった。通常, 断熱材表面に施される化粧モルタルの厚さは5〜10㎜程度のため, タームレーダーは現在問題となっている基礎外側断熱工法のシロアリ生息調査に十分対応できる結果となった。引用文献1 )吉村剛・村尾宗則(2009):シロアリの建物侵入箇所に関するアンケート調査結果, しろあり, 152, 1-92 )土居正(2019):基礎断熱工法における蟻害の実態6. 謝辞 最後にご指導, ご協力を頂きました京都大学生存圏研究所の吉村剛教授ならびに藤本いずみ氏には感謝の意を表します。
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