しろありNo.173
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る。さらに系統的にはwood-dwellingタイプが祖先的な性質であり, foragingタイプが派生的な位置にあると考えられている。 日本に生息するforagingタイプのシロアリ3種(タカサゴシロアリ, イエシロアリ, ヤマトシロアリ), および3種のwood-dwellingタイプのシロアリ(スギオシロアリ, シュワルツカンザイシロアリ, ネバダオオシロアリ)(図4)の女王と王, およびその他の非繁殖個体の脂肪体に対し, 倍数性解析を行った。その結果, 全ての種で女王の脂肪体は非繁殖個体の脂肪体よりも図3  シロアリの生活型。Wood-dwellingタイプのシロアリは巣であると同時に餌資源である単一の材を利用する。一方foragingタイプの種は巣と餌資源が必ずしも一致せず, 複数の材を利用する。図はNozaki and Matsuura 2019より改変して掲載した。図4  実験に用いたシロアリ種の女王(Q), 働きアリ(W), および兵アリ(S)の写真。図中のスケールバーは5mmを表す。図はNozaki and Matsuura 2019より改変して掲載した。高度に倍数化していることが分かった。一方, 雄では一貫した傾向は見られなかった。さらに, 女王の脂肪体の倍数化度合を種間で比較したところ, foragingタイプの種の女王は, wood-dwellingタイプの女王よりも高い値を示した(図5)。以上の結果から, 卵生産への形態・発生的な特殊化が進んでいる, 派生的な種の女王ほど脂肪体の倍数化度合が高いことが明らかになった。これらの結果は, 脂肪体における核相倍加が高い卵生産能力の獲得の際に重要な役割を演じたことを示唆している。4747

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