殺虫する。 (3)忌避剤 害虫の嫌う成分の揮発などにより対象物に近寄らないようにする。優れる。 これらの内, ケーブル表面に塗布あるいはシース材に配合する薬剤はシロアリに有効であることの他に, 様々な条件を満たさなければならない。まず, ケーブルは10〜30年と非常に長期に渡って使用されるものであり, 薬剤の効果の持続性も同等のものが求められる。また, シース材に薬剤を加えることで材料の強度低下や劣化の促進があってはならず, ケーブルの電気特性やケーブル製造時の作業性に悪影響を及ぼすものであってはならない。 上記の条件を満たし, ケーブルの防蟻薬剤として効果を示すものを適用すべく, 各種材料に薬剤を配合した試料を用いて種々の検討が行われてきた1), 2)。表1に供試した防蟻剤を示す。これら防蟻剤をPVCあるいはポリクロロプレンに3%添加し, 引張特性・老化特性・電気特性を評価した。PVCについては, 加工温度で揮発性の大きいものを除き, 防蟻剤添加による初期特性への影響はほとんどなかったが, ASP, PCP, Dieldrinを添加したものは熱老化特性が低下した。また, 絶縁性が要求される場合は体積固有抵抗が大きく変化しないBoliden, Chlordane, Dieldrin, Aldrinが適用可能であった。ポリクロロプレンでは引張特性への影響は少ないが, Chloro-o-phenyl phenol, Termite Repellent P-22は体積固有抵抗を大きく低下させ, Cu-naphthenate/PCP7古河電気工業 山本 雅也, 桑崎 悠介Reports1. シロアリによるケーブル食害と対策 シロアリは熱帯から温帯に生息する雑食性昆虫であり, 住宅など木造建築物に被害を与える害虫として良く知られるが, 木材の他にもゴム, プラスチック, 金属なども食害の対象となる。一般的に硬度の高いとされるポリ塩化ビニル(PVC)やポリエチレン(PE)を外装として使用する電力ケーブルも例外ではない。シロアリ生息地域に地中埋設された電力ケーブルが外傷を防ぐために被覆される外装(以下シース)や周囲への電気の漏れを防ぐ絶縁体を貫通する食害を受けて絶縁破壊を起こし, 停電事故に繋がる被害を受けている。日本において広く分布するイエシロアリとヤマトシロアリのうち, イエシロアリの生息地域が神奈川県以西の温暖な地域の海岸であり, 工業地帯と一致していることから, イエシロアリの被害は特に甚大である。 このようなシロアリによる食害に対し, 電力ケーブルの防蟻方法には(1)ケーブルを埋設した周囲の土壌を薬剤処理する, (2)ケーブル自体に防蟻性を付与する, の2種類が考えられる。(1)の土壌処理はケーブルの敷設後でも可能なため既設ケーブルに有効であるが, 新設ケーブルに対しては敷設時の工事が複雑になりコストも大きくなる他, 薬剤による環境汚染や長期の薬効維持が難しいなどの問題点がある。そこでこれらの問題点を考慮し, (2)ケーブル自体に防蟻性を付与する方法の検討が進められてきた。具体的には, 薬剤を電力ケーブルの表面に塗布, あるいはシース材料中に組成配合する方法や食害を受けにくい材料で電力ケーブルを被覆する方法が挙げられる。本稿はシロアリによる食害対策として開発されてきた防蟻ケーブルの歴史をまとめたものである。2. 薬剤防蟻ケーブル 一般に殺虫薬剤は, 駆除を目的とするものと食害を予防するものがあり, その作用機序から大きく次の4種類が挙げられる。 (1)接触剤 虫体に直接かかることで効果の出る直接接触剤と, 散布した後から害虫が触れても有効な残効性接触剤がある。 (2)食毒剤 害虫が薬剤を摂取することで中毒症状を起こして (4)呼吸毒剤 ガス状の有効成分で害虫を殺すもので, 即効性に報文防蟻ケーブル開発の歴史
元のページ ../index.html#11