しろありNo.176
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 ナイロンはPVCと比較して硬く弾性率が大きい材料であり, この機械的特性によりシロアリが食いちぎることを防いでいると考えられている。ナイロン被覆による防蟻効果の確認のため, 野外試験地にケーブルを埋設して行った食害試験が実施されており, その一例として試験結果を表4に示す4)。シロアリの排出物や粘土などで形成される蟻道がケーブル上で観察されたことから, シロアリがケーブル上を通過していることが確認できる。通過するシロアリはケーブル表面を食いちぎろうとしているはずであるが, 食害を受けたのはナイロンを除去してPVCシースを露出させたケーブルのみであった。また, ナイロン表面に荒れやシワ, ノッチを付与したケーブルでも食害が観察されず, ナイロンの表面状態が悪化しても防蟻効果への影響はない。試験前後でナイロンの機械特性や老化特性, 耐薬品性などの低下もなく, 優れた防蟻性を持つ被覆材料であると言える。標準表面荒れ表面シワ表面ノッチナイロン除去(PVC露出) 薬剤配合の防蟻ケーブルは従来品から構造の変更の必要がなく, 通信ケーブルから電力ケーブルまで様々なサイズへの適用も可能であった。一方, ナイロン被覆ケーブルではナイロンの硬さにより防蟻性を発揮しているが, その硬さゆえに屈曲性や可撓性がPVCよりも劣る。また, ケーブルでは用途や敷設環境により防蟻性と同時に難燃性や耐薬品性が要求される場合もある。ナイロンは可燃性材料であり, ポリエチレンと比較すると耐薬品性も劣ることから, そうした場合には材料や構造について更なる工夫が必要である。次項では特に電力ケーブルで要求の多い難燃性を付与した防蟻ケーブルについて述べる。* ケーブルに使用されるPVCは, 可撓性付与のため可塑剤を配合した軟質PVCに相当する料選定の際には酸素指数(OI)が指標として用いられる。各材料の一般的な酸素指数を表5に示す。例えば電力ケーブルにおいては, 難燃仕様の場合は酸素指数26以上が要求される。PVCは元々樹脂自体が難燃性を有する材料であるが, ケーブルに使用する場合には可撓性付与のために可燃性の可塑剤を加える必要があるので難燃剤を加える必要がある。これまで検討されてきた高硬度の材料はいずれも可燃性であるため, 難燃仕様を満たすには, 大量の難燃剤を加える必要があるが, トレードオフとして機械的強度や耐寒性をはじめとするケーブルシースとして必要な諸特性が著しく低下してしまうというジレンマを抱えている。クロロプレンゴム 防蟻ケーブルを難燃化する手法としては, 以下が検討されてきた。・難燃PVCに薬剤を配合 薬剤の配合により従来の難燃PVCと材料特性が著しく変わることなく防蟻性を付与することができれば, 通常のケーブルと同じ製造効率や取り扱いが可能であるが, 効果の高いドリン系の薬剤などはすでに使用が禁止となっているため, 同様の効果を有し, かつ人体や環境に影響のない薬剤を探索する必要がある。・ナイロン防蟻層の上に難燃PVCを被覆 防蟻ケーブルとしては, PVCシースの上にナイロンを被覆したものが一般的であり, そこにさらに難燃PVCを被覆したものが現在の主流となっている。3層構造のため, 従来の2層構造よりもさらに製造効率が悪く, サイズアップにより取り扱いが悪くなるなどの問題がある。一例として当社のトリプレックスケーブル(図1)について一般仕様と防蟻仕様の外径を表6に示す。表5 プラスチック材料の酸素指数(OI)5, 6)表4 ナイロン被覆ケーブルの食害試験(4年間)食害試料形状0/100/100/100/10蟻道10/1010/1010/1010/105/54/5種類PEPPEPゴムPVC軟質PVC*ナイロン酸素指数(OI)17〜1817〜1820〜2138〜4919〜3630〜3121〜29994. 防蟻ケーブルの難燃化 シースには難燃仕様が要求される場合がある。ケーブルの試験としては, JIS C3005の傾斜燃焼試験やIEEE383の垂直トレイ燃焼試験などを実施するが, 材

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