しろありNo.176
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い反面, 短所として(1)吸湿, 放湿に伴い割れや寸法が狂う(2)シロアリ, カビ, 腐朽菌などの生物劣化を生じる。(3)汚れやすく傷がつきやすい(4)燃える等がある。 これらの短所を改善するための処理技術としてや防腐・防虫・防火の保存処理,樹脂注入処理があり木材の使用寿命を長持ちさせている。3) 一方, 鉄鋼業界の鋼材やプラステック産業のプラステック材料には, 塗膜の密着性を向上させる多くの表面処理が存在する。鋼材の表面処理としてリン酸鉄, リン酸亜鉛, 塗付型クロメート処理などがありプラステック材料には, フレーム処理, イトロ処理, プラズマ処理などがあり, それぞれの素材の欠点を化成処理とコーティングすることにより補い耐候性や耐食性などの機能性や意匠性を付与することで幅広い産業に使用されている。 従来の木材保護塗料・薬剤は, 木材に含まれる油脂成分との馴染みが良いアルキド樹脂に防蟻・防腐剤を溶解させた溶剤型塗料が幅広く用いられ, その作業性の良さと性能面より現在も使用されている。しかしながら大気汚染(VOC)や廃棄物処理問題・含有する溶剤の人体への影響等により水系塗料・薬剤へ移行しつつある。 木材に激しい被害を与えるシロアリの生態と木材中に含まれる成分に着目し溶剤から水へより機能的で安全な環境にやさしい塗料・薬剤の開発検討結果を紹介する。 11ケミプロ化成株式会社 大阪工場 埜口 勇Reports1. はじめに 国連が採択した2030年までに達成を目指す世界共通の目標がSDGs「Sustainable Development Goals」(持続可能な開発目標)です。 林野庁は, 森林が国土の保全,水源の涵養, 地球温暖化防止, 木材の生産等の多面的機能を有した大切な資源であると同時に地球上に解決すべき問題(環境問題,社会問題, 経済問題)への危機意識からホームページ上でSDGsの達成に向け林業・木材産業関係者に加え, 様々な企業や個人が森林に関わり, また行政の立場からも各種取組が活性化するよう後押ししていくことを公表しています。1) 国土の3分の2を占める森林は, 水を育む, 気候変動を緩和する, 山地災害を防止するなどの多面的機能を持っており, 森林・林業・木材産業は, SDGs 目標15 「陸域生態系の保護, 回復, 持続可能な利用の推進, 持続可能な森林の経営, 砂漠化への対処, ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する」に対して大いに貢献しています。 森林に携わる林業・木材産業から供給される木材は, 柱や板から木質ボード, 紙, 燃料(バイオマスエネルギー)に, 形を変えながら何度も利用することが出来る貴重な再生資源であり2), 木造率が低く潜在的な需要が期待できる公共建築物において, 国や地方公共団体が率先して木材利用に取り組むことが重要との考えから「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が平成22年10月に施行され今後ますます多方面へ利用されることが推測されます。 木材は, 再生資源とは言ってもそのサイクルは何十年という長い期間に渡るので木材の長所・短所を理解しその特性を生かしながら大切に使わなければなりません。 木材の長所は, 無数の薄肉中空状の細胞が集束した特有の組織構造を持った多孔質材料である。軽くて強度が大きく天然の優美な木目, 色調などの質感があり断熱性, 遮音性, 調湿機能に優れ人間生活に馴染み易報文水性木材保護塗料・薬剤の開発2. シロアリの生態と摂取行動ついて シロアリは,昆虫綱ゴキブリ目に属し真社会性昆虫として森に暮らし森の掃除屋として落ち葉を食べ森林を健全に保つ役割を果たす益虫ですが建築に使われる木材に大きな被害を与えることより害虫扱いされている。 日本に現在24種類のシロアリが生息しているがその中でシロアリ被害において重要な種は,ヤマトシロア

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