しろありNo.176
21/60

表5 珪藻土の防蟻効果が重要である。水分はシロアリが好む環境を生むだけでなく建築現場等で降雨による水分の吸放出による収縮・膨潤で寸法違い, 割れなどが生じ建物に隙間を生じる原因となる。18) 今回開発の水系木材保護塗料はヤニ止めなどのシーラーとして木造建築物の下塗材として使用され寸法安定性をもたらすだけでなく少ない量の薬剤の使用で同等以上の効果を持ちPHが酸性側であるカチオン樹脂を採用することで木材からの水溶性成分を抑え含浸性・密着性に優れた薬剤としても利用できる。防蟻だけでなくカビの栄養源である木材中のデンプン, 糖およびタンパク質, 木材腐朽菌の栄養源であるセルロース,ヘミセルロース, リグニンが塗膜表面に露出しないため防カビ性や木材腐朽菌に対しても同等以上であることが社内試験で確認されている。 設計するにあたりカチオン樹脂は顔料選択性があり貯蔵安定性の問題を解決するために時間を要した。その他PHを酸性側にする樹脂としてはイオン性がノニオン性のポリビニルアルコール酢酸ビニル共重合体(PVA)やエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)のエマルションなども使用可能である。 これらの設計思想より当社より【ジノテクト木部用クリヤ・オレンジ】が既に上市されている。 現在商品化されている水系木部用薬剤の多くは,薬1717酵母菌や松ヤニ, 混濁物質, 原料・副原料のカスの濾過助剤, 壁紙・塗料などの調湿・消臭剤として広く利用されている。15〜17) 塗膜に珪藻土を分散させた場合の防蟻試験を実施した。(表5) 表5より珪藻土を塗膜中に配合しないものは, 表3の木材片の平均質量減少量(%)30.0%に対し26.8%とほぼ同じである。 珪藻土を樹脂固形分に対し9.7%配合した平均質量減少率は, 9.7%と約1/3であった。常温硬化型エポキシ樹脂が架橋しても塗膜自体が水分を完全に遮断することができないため木材中の水溶性成分が耐候操作で表面に移行しシロアリの食害を受けたと推測される。 珪藻土を配合した塗料では, 木材中の栄養源が表面へ移行する防止する効果があるとともにシロアリが削り取った残骸の塗膜中の珪藻土が体液を奪うことより忌避した可能性があるため平均質量減少量(%)が減少したと思われる。(図3)イオン性塗付量(g/㎡)平均質量減少率(%)死虫率(%)ビフェントリン(防蟻剤)(%)珪藻土(%)試験後(試験片)樹脂常温硬化型エポキシ樹脂常温硬化型エポキシ樹脂カチオン11026.81.10.00.0カチオン1109.73.30.09.76. おわりに シロアリの生態や木材中に含まれる成分に関して着目し設計思想を立て, 検証することで環境に優しい水性木材保護塗料を開発できた。木材は水に溶出する成分を含むため水系塗料・薬剤の設計に際し水分の制御

元のページ  ../index.html#21

このブックを見る