しろありNo.176
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bdeac3434栃木県日光市山内地区, 中宮祠地区, 中禅寺地区の3地区にある文化財建造物72棟で行った。調査に使用した捕虫テープの総本数は27,021本で, それらは主に小屋裏と床下の2箇所の空間に均等に設置した9)。筆者は主に捕獲された昆虫の同定を担当した。その結果, 調査対象とした文化財建造物のほとんど全てで甲虫が捕獲された。捕虫テープの粘着性や輸送中に捕獲した甲虫が破損することもあり同定が困難の場合もあったが, シバンムシ科甲虫はこれまでのオオナガシバンムシ, クロトサカシバンムシ, チビキノコシバンムシ以外にエゾマツシバンムシHadrobregmus pertinax(図2d), アカチャホソシバンムシOligomerus japonicus(図2e)の2種が確認された10)。捕獲個体数はどの種も同数程度が得られたわけではなく, 建物ごとに異なる傾向が表1 日光の文化財建造物で確認したシバンムシ科甲虫と特徴みられた。また, 捕虫テープごとのシバンムシ科甲虫の捕獲個体数を調査した結果, 輪王寺三仏堂では設置した捕虫テープにまんべんなくオオナガシバンムシとチビキノコシバンムシが捕獲されており, 大猷院霊廟二天門では建物中央部にクロトサカシバンムシの捕獲が集中しているなど, 種類によって異なっていた11)。 これまで文化財建造物を加害するシバンムシの多くはケブカシバンムシとして考えられたが, 日光二社一寺の調査ではケブカシバンムシはまったく捕獲されず, 様々なシバンムシ甲虫が確認される結果となった(表1)。そして, 一部の文化財建造物ではシバンムシ科甲虫の被害が甚大で, 早急に殺虫処理をして被害の進行を止める必要があると認識された。 図2  日光の文化財建造物で捕獲されたシバンムシ科甲虫 a オオナガシバンムシ(体長5.0mm), b クロトサカシバンムシ (体長6.2mm),  c チビキノコシバンムシ(体長1.7mm),   d エゾマツシバンムシ(体長5.0mm), e アカチャホソシバンムシ(体長4.2mm)種名オオナガシバンムシクロトサカシバンムシチビキノコシバンムシエゾマツシバンムシアカチャホソシバンムシ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■学名■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■体長■(mm)体色は赤褐色から暗赤褐色で,黄白色の細毛でおおわれる。触角先端3節は,ほかの節より大きくなるが,その程度は弱い。前胸背板の突起は鋭く突出し,その頂点の毛束は黒褐色をしている。体色は濃褐色で,上翅に密な点刻列がある。■■■■■■ ■■■■■■■■■■■ ■■頭部下部に,触角を収納する空間が存在する。体色は黒色から黒褐色で,前胸背板の後角に橙黄色の毛斑がある。触角先端3節は,ほかの節より大きくなる。■■■■■■ ■■■■■■■体色は赤褐色で,触角先端3節は著しく伸長する。特徴■*, 引用文献12,13,14)をもとに作成した。3. 湿度制御温風処理における殺虫効果判定の確立 文化財建造物のシバンムシ科甲虫の駆除法として, 最も一般的なものでは薬剤による処理で, 主に燻蒸による方法と木材保存剤を直接塗布したり吹き付ける方法である。輪王寺三仏堂における燻蒸による殺虫効果の検証に向けて, オオナガシバンムシ幼虫の生息が確認された被害材や漆塗り塗装を施した材を用いてフッ化スルフリルによる処理実験を行った。その結果, 材

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