しろありNo.176
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1㎜1㎜1㎜1㎜acbd調査を行った。供試虫はアフリカヒラタキクイムシを選定し, 卵と幼虫が入るように調整した植卵人工飼料を作製した。これを30cm角のケヤキ材の中央部に封入して湿度制御温風処理の処理空間内に設置した。湿度制御温風処理後に一定期間飼育したところ, 処理区の植卵人工飼料からは成虫の発生は全く見られなかった。一方, 捕虫テープを用いた捕獲調査では, 建物外から侵入した個体が捕獲される可能性があることや設置した場所のすべての昆虫を捕獲することができないため, 本法のみで殺虫効果判定を行うことができないことが示唆された21, 22)。現時点において湿度制御温風処理の殺虫効果判定にはアフリカヒラタキクイムシを供試虫として用いた判定と捕虫テープによる捕獲調査の両方を行い, 総合的に殺虫効果判定を行う必要があると考える。 図5  日光の文化財建造物で採取したシバンムシ科甲虫の虫糞(a オオナガシバンムシの虫糞, b クロトサカシバンムシの虫糞, c チビキノコシバンムシの虫糞, d エゾマツシバンムシの虫糞)シ科甲虫では形態的に特徴のある虫糞が認められていたため, 脱出孔の形状と虫糞の触感や顕微鏡による形態観察を通して生体痕跡と加害種との関連性について検討を進めることとした。 日光二社一寺で捕獲されたシバンムシ科甲虫のうち4種のシバンムシ科甲虫がそれぞれ加害した木材から採取された虫糞の形状を調査した。その結果, チビキノコシバンムシの虫糞(図5c)は他のシバンムシ科甲虫3種とは異なり, オオナガシバンムシ(図5a)とエゾマツシバンムシ(図5d), クロトサカシバンムシ(図5b)はケブカシバンムシの虫糞と類似していたが, より正確な加害種を特定するには脱出孔の大きさや虫の分布域など虫糞以外の情報を考慮したほうが良いと考える23)。加害種が特定されていない文化財建造物から採取された虫糞の比較では, 虫糞から推察されるシバンムシの種と2010年に行った捕獲調査で確認されたシバンムシの種が一致するものもあった22)。シバンムシ科甲虫は自然環境に多く生息しており, 虫糞形状がすべての種で解明されているわけではないので, 虫糞形状のみでは加害種を特定することは出来ないものの, ある程度の加害種の推察が可能であると考える。 湿度制御温風処理の供試虫として人工飼育が可能なアフリカヒラタキクイムシを選定し殺虫効果判定を行ったが, 本来は実際の加害種であるシバンムシ科甲虫を用いる方が適切であるという課題が残されていた。木材を加害するシバンムシ科甲虫は自然界でまと37374. シバンムシ科甲虫の新規モニタリング手法 シバンムシ科甲虫は成虫期間が短く, 建造物で被害を確認しても加害種の生体を発見することは難しいため, 屋根裏や床下に捕虫テープを長期間設置し, 生息数のモニタリング調査が行われてきた。一方で, シバンムシ科甲虫が羽化して木材から脱出した跡である脱出孔や材内に溜まった幼虫期の虫糞の特徴を調査することで加害種の生物種を類推することが出来れば, 脱出孔と虫糞の形態情報も虫害調査を行う上での有益な情報となる。現地調査において, いくつかのシバンム

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