しろありNo.176
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を調製した。この培養液を6本の2mLセーフロックチューブ(Eppendorf)へ, 0.5 mLずつ分注した。チップの先端を2mLセーフロックチューブ内のHP培養液0.5mLと0.2mL PCRチューブ内のPCR溶液(KOD Plus, Toyoboのプロトコルに従い調製)30µLに浸漬した。セーフロックチューブの蓋をした後, 酸素濃度0.0%の嫌気性雰囲気と21%の好気性雰囲気で24時間培養し, 2mLチューブのヘッドスペースガスに含まれる水素濃度を測定した。また, PCRチューブの蓋をした後, PCRで細菌の16S rRNA遺伝子のV3-V4領域DNAを増幅した18)。PCRで用いたプライマーはprobeBase (https://probebase.csb.univie.ac.at/node/8)に掲載されているフォワードプライマーBakt_341F: 5'-CCTACGGGNGGCWGCAG-3'(https://probebase.csb.univie.ac.at/pb_report/probe/3844)とリバースプライマーBakt_805R: 5'-GACTACHVGGGTATCTAATCC-3'(https://probebase.csb.univie.ac.at/pb_report/probe/3845)の配列を使用し, Sigma-Aldrichに合成を依頼した。ここで, プライマー配列に使用されているN(A, C, G, T), W(A, T), H(A, C, T), V(A, C, G)は, それぞれ()内に記載した混合塩基を表している。PCR条件は, 94℃30秒, 55℃30秒, 68℃45秒を30サイクル行った。PCR増幅産物をアガロースゲル電気泳動で分離し, GelRed Nucleic Acid Gel Stain(BTI Biotium)で染色した際に465bp付近に現れたDNAバンドを切り出し, NucleoSpin Gel and PCR Clean-up(Macherey-Nagel)で精製した。精製したDNAの塩基配列をBigDye Terminator v3.1/1.1 Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems)と上述のBakt_341FあるいはBakt_805Rプライマーを用いて増幅し, さらにCentri Sep(Princeton Separations)で精製した後, ABI Prism 3100 Genetic Analyzer(Applied Biosystems)で塩基配列を解読した。得られた塩基配列の相同性をBLASTN(http://ddbj.nig.ac.jp/blast/blastn?lang=en)で検索した。 43432.3 水素とメタンの測定 培養液を分注した2mLチューブ3本を, A-07アネロパック・ケンキ5%(三菱ガス化学)およびOXY-1-M酸素モニター(イチネンジコー)とともにA-58アネロパック・パウチ袋(三菱ガス化学)にいれ, 密閉クリップ(スギヤマゲン)を用いて密閉した。パウチ袋内の酸素濃度が0.0%に到達した後に, 27±1℃に調整したP-BOX-TA(サンプラテック)内に移し所定の時間, 培養した。培養液を加えた2mLチューブ上部のヘッドスペースガスに含まれる水素とメタン濃度を, 0, 1, 2, 3, 4, 6, 12, 18, 24, 48, 72, 96時間培養後に, XG-100ポータブルガス分析装置(新コスモス電機)16)を用いて測定した。コントロールとして, A-07アネロパック・ケンキ5%をパウチ袋に入れずに, 酸素濃度21%で同様の操作を行った。繰返し数は3とし, エクセル統計(社会情報サービス)を用いてt検定を行った。2.4 水素産生に対する単糖類の影響 2.2培養液の調製で用いたHP培養液に, アラビノース, ガラクトース, グルコース, マンノースあるいはキシロースを1%となるように添加した。後腸破砕物とこれら単糖のいずれかを含む培養液を, 6本の2mLセーフロックチューブへ, 0.2mLずつ分注した。2.3水素とメタンの測定に示した方法と同様にして, 酸素濃度0.0%の嫌気性雰囲気と21%の好気性雰囲気で, 0, 6, 12, 18, 24, 48, 72, 96時間培養後に, 2mLチューブ上部のヘッドスペースガスに含まれる水素とメタン濃度を測定した。繰返し数は3とし, エクセル統計(社会情報サービス)を用いてt検定を行った。2.5 水素産生細菌の同定 1%寒天を加えオートクレーブで滅菌したHP培養液を直径90mmの滅菌シャーレに流し込み作製したHP寒天培地の表面に, 2.2培養液の調製に従って調製したヤマトシロアリ後腸破砕液を含む培養液(1後腸/mL)の1000倍希釈液0.5mLを加え, コンラージ棒で寒天培地の表面に均一に塗布した。2.3水素とメタンの測定に示した方法と同様にしてパウチ袋内に密閉した寒天培地を酸素濃度0.0%で培養した。現れたシングルコロニーをクリスタルチップ(epT.I.P.S. Standard 0.5-20 µL, Eppendorf)を用いてピックアップし, クリスタル3. 結果と考察 単糖類を培養液に添加せずに, シロアリ後腸破砕物を添加した培養液を培養したところ, 嫌気性雰囲気(酸素濃度0.0%)と好気性雰囲気(酸素濃度21%)どちらの条件でも, 培養開始12時間経過後から水素が顕著に検出されるようになった(図1)。嫌気性雰囲気では, 水素産生量は12時間から72時間まで増加し続けた。好気性雰囲気では, 12時間から72時間の間に水素が産生され続けたが, 嫌気性雰囲気での産生量よりも少なかった。一方, 96時間の培養期間に, 嫌気性雰囲気と好気性雰囲気ともにメタンは検出されなかった。シロア

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