88 図1より, 日本国内へのアメリカカンザイシロアリの侵入は少なくとも3回起こっていることが示された。注意を要するのは, ここで示したマイクロサテライト解析の結果に基づく系統樹は, 分析した分集団(ここでは採集地)間での相対的な関係を示すものであり, 分析対象集団が増減すると系統樹の形(分集団間の相対的な関係)が変わってくる点である。また, 熊本市で採集されたアメリカカンザイシロアリは尼崎市で採集されたアメリカカンザイシロアリとほぼ同じ分集団であるという結果が図1に示されているが, 上述したように, 実際にはこの2つの分集団(熊本市と尼崎市)間の関連性は高くなく, 熊本市のアメリカカンザイシロアリは輸入木材とともに新たに国内に持ち込まれた可能性が高い。謝辞 アメリカカンザイシロアリをご提供いただいた尾屋勝夫様, 故・星野伊三雄様, ならびに吉村剛先生と大村図1 非加重結合法(UPGMA法)による系統樹(グループA, B, C)和香子先生を通してご提供いただいた廣瀬博宣様, 宮田光男様はじめ公益社団法人日本しろあり対策協会会員の皆様, Vernard R. Lewis博士, Ariel Power博士に, 深く御礼申し上げます。2 )森 八郎 (1976): アメリカ乾材シロアリ東京都内に定着,しろあり, 27, 45-47.3 )Indrayani, Y., K. Matsumura, T. Yoshimura, Y. Imamura, S. Itakura (2006): Development of microsatellite markers for the drywood termite Incisitermes minor (Hagen), Mol. Ecol. Notes, 6, 1249-1251.4 )松村 圭・Y. Indrayani・板倉修司 (2007): アメリカカンザイシロアリ用マイクロサテライトマー参考文献1 )吉村 剛 (2011): 外来木材害虫アメリカカンザイシロアリの総合的防除に向けた取り組み, 木材学会誌,57 (6), 329-339.
元のページ ../index.html#14