しろありNo.177
26/61

2020図2 調査地点におけるスギオシロアリの加害状況(Sugio et al. 2018を改変)黒丸は, カンヒザクラの被害が確認された地点を示し, 白丸は, 被害が確認されなかった地点を示す。点線は, 市町村の境界線。ある木が被害木である調査地点の割合を, フィッシャーの正確確率検定を用いて解析した。(b) 調査地点P11と調査地点P12における被害木と非被害木の位置。点線は各地点の調査範囲を示す。実線は各調査地点付近の道路や歩道などを示す。黒丸は被害木の位置を, 白丸は非被害木の位置を示す。7.1%が, スギオシロアリによる被害を受けており, 家屋害虫として知られるイエシロアリによる被害(0.9%)よりも, スギオシロアリによる被害の方がはるかに多かった。3.2 調査サイト内の被害樹木の分布パターンの推定 スギオシロアリによる被害を受けているカンヒザクラの分布パターンを明らかにするために, 被害木が2本以上ある調査地点(n=14)で行った調査の結果, 被害木に最も近い位置にある木が被害木であったのは7地点(50.0%)であり, 非被害木に最も近い位置にある木が被害木であったのは1地点(7.1%)のみであった。また, 被害木に最も近い位置にある木が被害木であった調査地点の割合は, 非被害木に最も近い位置にある木が被害木であった調査地点の割合よりも有意に高く(フィッシャーの正確確率検定, p < 0.05;図3), 被害木は, 被害木の近くに存在する可能性が高いことが示された。これらの結果から スギオシロアリの分散を担う有翅虫の飛翔距離は短いと思われるため, 本種は近距離に分散して樹木に営巣している可能性が高いことが示唆された。図3 カンヒザクラの被害木と非被害木との位置関係(Sugio et al. 2018を改変)(a) 被害木が, 被害木の近くにある確率(黒)と非被害木の近くにある確率(白)。アスタリスクは, フィッシャーの正確確率検定により統計的に有意な差(p <0.05)が見られた事を示す。3. 結果と考察3.1 シロアリによる加害 カンヒザクラを加害したシロアリは, スギオシロアリとイエシロアリのみであった。スギオシロアリによって加害を受けたサクラは, 36地点中21地点(58.3%)で確認された(図2)。各調査地点における被害木の割合は, 平均18.4%で, 最大50.0%, 最小2.5%であった。調査したサクラ1,076本のうち76本(7.1%)で被害が確認され, 被害の進行度別の数は, ステージ1が29本(38.2%), ステージ2が32本(42.1%), ステージ3が15本(19.7%)であった。また, イエシロアリによって被害を受けたのは6地点(16.7%), 被害本数は10本(0.9%)にとどまった。これらの結果をまとめると, カンヒザクラのシロアリ被害は, 調査地点の58.3%で確認され, 被害の割合が最も多かった地点では, 50.0%の個体に被害が確認された。また, カンヒザクラの

元のページ  ../index.html#26

このブックを見る