Research Topics36での効果検証を生活・森林圏シミュレーションフィールド Living-Sphere Simulation Field : LSF圃場内で実施していた。検定試料は, 各種材の各部をそれぞれ粉末化後に有機溶剤で抽出して調製し, 各抽出液による誘引・定着性を屋内試験にて検証したところ, 樹皮に近いスギ辺材部由来成分がヤマトシロアリに対して有意な誘引・定着性を示した。含有成分を各種カラムクロマトグラフィーで段階的に分画したところ, 単一画分に誘引・定着活性が局在化し, ガスクロマトグラフ・質量分析によって候補成分をジテルペンアルコールと推定するに至った。2008年当時の調べではこの推定化合物が入手不可だったのだが, 2021年調べでは入手可能性があると判明した。13年越しになるが, 推定化合物を用いての屋内外活性確認試験を現在検討中である。京都工芸繊維大学 秋野 順治2. 阿蘇リモナイトによるイエシロアリ防除効果の検証 阿蘇地域では古来より阿蘇リモナイトによる防虫効果がささやかれていたのだが, 住宅基礎部に阿蘇リモナイトを敷き詰める工法がとられていることを聞き, 2015年からその検証対象をシロアリに絞って科学的な考証を加えようと始めたものであった。2017年3月に前期博士課程を修了するまでの3年間このテーマに専念した神野壮大君によるところが大きい。 2016年度からDOL/LSF利用申請を行い, 吉村先生の協力を仰ぎながらJISの試験法を応用した評価法を適用し, ヤマトシロアリとDOL提供イエシロアリを用いた屋内試験とLSFでの野外試験を同時に開始した。屋内試験では, 両シロアリ種の食害に対して阿蘇リモナイトは有意な遅延効果を示すことが判明, LSF野外試験の2年目の調査においては阿蘇リモナイトによる著しいイエシロアリの食害防止効果が明らかになった。 2019年度からは, 阿蘇リモナイトを配合した建築資材及び塗料によって被覆・塗布処理した木片を設置し, それぞれによるイエシロアリの食害防止効果を検証中研究トピックス天然資材によるシロアリ誘引効果および忌避効果の検証はじめに 生態系内で腐朽材の分解者として機能する約2300種のシロアリ類のうち, ヒト社会と関わりあいの深い約80種が木造建築物等に重大な被害を及ぼす家屋害虫として防除対象とされている。日本に生息するシロアリ約20種のなかでは, イエシロアリ(Coptotermes formosanus)とヤマトシロアリ(Reticulitermes speratus)の2種による家屋被害が大きく, 近年これらのシロアリ害対策としてアメリカで開発され日本に輸入された“ベイト工法”が広く用いられている。しかし同法は, イエシロアリに対しては有効である反面, ヤマトシロアリには効果が上がりにくいことが指摘されており1), 依然としてシロアリ防除に有効な天然素材由来の忌避剤もしくは誘引剤も希求されている。 著者は, 京都工芸繊維大学着任後の2007年から研究室所属の学生とともに, 京都大学生存圏研究所の故角田邦夫先生ならびに故吉村剛先生の教えを請い, 天然素材由来のヤマトシロアリ誘引成分の検証, および天然素材によるイエシロアリ忌避効果の検証を継続して実施してきた。各検証結果, 特に後者に関しては現在取りまとめ中であるため, 現時点では未発表段階であるが, 本稿では吉村剛先生を偲びつつ各々の概要を報告したい。また紙面の都合上詳細を述べることはできないが, 大学院生の研究テーマ:ヤマトシロアリの同巣認識に対する腸内原生動物の影響を検証する際に, 吉村剛先生には, 当方学生への丁寧な技術的指導を頂いたことについても, 改めて感謝の意を表したい。1. スギ辺材由来のヤマトシロアリ誘引成分の検証 これは, 2009年3月に京都工芸繊維大学大学院前期博士課程を修了した川田達郎君によるものである。マツや米マツ, スギ, スプルースなど多種の樹皮及び辺材部に由来する化学物質を用いた室内試験によって, ヤマトシロアリやイエシロアリ(居住圏劣化生物飼育棟 Deterioration Organisms Laboratory : DOLより提供)の誘引性を検証したもので, 同時進行的に屋外
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