しろありNo.177
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んな生物の話をしてくださる姿がとても印象的でした。吉村先生は私が知る中で最も研究者らしい研究者でした。受けた御恩を返すこともできませんでしたが, 今後の自身の研究成果を通して, 少しでも当該研究分野の発展に寄与できればと思っています。 末筆ながら, 謹んで吉村先生のご冥福をお祈り申し上げます。田伸彦・米沢保正・近藤民雄 編, pp. 65-80.2)Yoshimura, T., N. Kagemori, S. Kawai, K. Sera, S. Futatsugawa(2002): Trace elements in termites by PIXE analysis. Nucl. Instr. Meth. Phys. Res. B 189, 450-453.3)須原弘登・中谷 誠・森 拓郎・伊藤貴文 (2015): 切り捨て間伐材のシロアリによる生物劣化促進, 木材保存, 41(3), 119-128.4)杉尾幸司ら(2012): シロアリと教育, “シロアリの辞典”, 吉村 剛・板倉修司・岩田隆太郎・大村和香子・杉尾幸司・竹松葉子・徳田 岳・松浦健二・三浦 徹 編, 青海社, pp. 355-404.5)Chen, J., G, Henderson (1996): Determination of feeding preference of Formosan subterranean termite (Coptotermes formosanus Shiraki) for some amino acid additives, J. Chem. Ecol. 22, 2359. 本研究は京都大学生存圏研究所の居住圏劣化生物飼育棟/生活・森林圏シミュレーションフィールド共同利用研究(2019DOL/LSF-12, 30DOL-LSF-12, 29DOL/LSF-10)において実行されました。4040有意差は見られなかった。この結果は少数のシロアリを用いる試験では, 集団内でリンがすぐに飽和してしまうためではないかと考えられる。考察 本研究の結果から, DKPにはイエシロアリの食害を促進する効果があることが示された。リンは生物の体内で遺伝情報を担うDNAとして必須であるほか, 様々な機能性分子に必要な元素である。シロアリコロニーでは虫体数を増やしてコロニーを拡大するためにリンが常に必要とされていると考えられる。 今回の研究で用いたDKP濃度は最適かどうか不明であり, 今後検討が必要である。また, DKPの食害促進効果がほかの地下性シロアリ(国内ではヤマトシロアリ)にも効果があるかを検証したい。DKPは食品添加物として用いられており, 人体及び環境に対しても負荷が低い。今回得られた成果をシロアリの防除方法の一つであるベイト法に適用することで, 検出感度の向上や薬剤使用量の低減(レスケミカル化)が期待できる。今後はベイト法での実用化を目指して野外での実践的な検証に取り組みたい。おわりに 本研究を遂行する上で, 吉村教授(京都大学生存圏研究所)には大変お世話になりました。先生とは京都大学生存圏研究所の居住圏劣化生物飼育棟/生活・森林圏シミュレーションフィールド共同利用研究を始めたことがきっかけで、ご指導を頂ける機会に恵まれました。研究を開始した当初, シロアリを扱ったことが無かったシロウト同然の私に対し, 基本的な知識から実験方法まで丁寧にご教授頂いたことは, 感謝の念に堪えません。共同利用研究のために先生の居室を訪ねる度に, 私の「生き物好き」を知って, 嬉しそうにいろ参考文献1)右田伸彦(1968): 木材の組成,“木材化学 上巻”右

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