4444が強く, てんぷらはもちろん炒めても大変に美味であった。和洋中華エスニックと料理を選ばないキノコだと思った。多くの原産地で, Termitomyces属は経済価値の高いキノコである3)というのも頷ける。 オオシロアリタケの発生時期は, 沖縄では梅雨の末期である。採集時期はたいてい雨なのだが, 沖縄地方の梅雨は, 本土の梅雨とは異なり, ずっと雨が降っているというものではない。熱帯の雨期のように, 降ったりやんだりを繰り返す。通り雨のような降雨の時間をやり過ごし, 雨が止んでいる間に探索・採集作業を行う。西表島での採集は順調で, たくさんのキノコを採集した。前年の採集では見られなかったほどのキノコの大きな群生も観察された(写真1)。また, キノコの下の菌園を掘り出し観察・採集することもできた(写真2)。こういう作業を嬉々として率先してされるの写真1 オオシロアリタケの群生写真2 タイワンシロアリの菌園から発生するオオシロアリタケ幼菌が吉村先生である。八重山にはタイワンシロアリのほか, タカサゴシロアリなど, 本土では見られないシロアリも生息していることから, 吉村先生も楽しい時間を過ごしておられた。 西表島での採集の翌日, 石垣島での採集となったが, 時折小止みになることはあったもののずっと雨が降っていた。おかげで, この日も多くのキノコを得ることができた。また, ヤエヤマセマルハコガメ(写真3)というかわいらしいリクガメや, 宝石のようなナナホシキンカメムシにも出会うことができた。昆虫や動物が好きな吉村先生も喜んで写真を撮られていた。午後からは集中豪雨のような大雨で, 市街地の道路が川のようになるほどだった。 宿に戻ってからは, キノコから菌糸体を得るための分離の作業を行った。アルコールランプの炎の下で, 割いたキノコの内部から, 組織を一部, 無菌的に取り出し, 培地の上にそっと置いておく。3日もすれば, そこから新しい菌糸が発生し, ふんわりとしてくる。そうなれば分離は成功だ。キノコのままでは腐ってしまうが, 菌糸の状態にすることで, そのキノコは長く生かしておくことができ, 様々な試験に使用できる。普段腐朽試験で使用する腐朽菌が, このようにして子実体から菌糸体として取り出されたのか, その作業を初めてみたと, 吉村先生が作業を興味深く見守っておられたことを覚えている。 作業の途中で, 吉村先生は翌日にご予定があるということから, 私たちより一日早く夕方の飛行機で帰洛された。空港へ向けて出発された時にも, まだ雨はしっかり降っていた。あまりに雨足が強いので, 飛行機が無事離陸できるか心配したほどである。ところが, 写真3 ヤエヤマセマルハコガメ
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