5050太サンプル内の腐朽は, 位置によらず全体が同程度に進行していることが目視による観察から確認できた1)。このことから, 本研究で提案した疑似丸太系は, 均一な腐朽状態を作成する方法として有効であることが示された。3. 2 摂食排出活動量と生存率の定量化 腐朽している木材又はろ紙を与えたときの方が, 腐朽していないそれらを与えたときよりも, 摂食排出活動量が高い事が定量的に明らかになった1~5)。シロアリの生存率は, 餌の種類に依存し, 木材よりもろ紙を与えた場合に下がった1~5)。これらの結果から, シロアリの木材への侵入は侵入していない部分と比べて, 腐朽している部分をシロアリが好んで削り摂食排出する特徴を持っている可能性が高いことが示唆された。図2 不均一な腐朽が起こっている木材ディスクの一例研究の進展に伴い, この研究トピックスへの執筆を打診頂いたことがあったにもかかわらず, いずれと先延ばしにして今頃の執筆となってしまった。この場を借りて, 改めて感謝を申し上げたい。また, 今年に入ってからも本研究の続きとして今後の可能性を議論していた取り組みについては, 遅い歩みながらも進めて行けるよう, 見守っていてくれたらと願う。2 )木原久美子・中川喬文・山田明徳・吉村剛, 環境微生物による複合的な腐朽の初期段階にある木材に対するシロアリの侵入と消化の定量的解析, 環境微生物系学会合同大会2017, 2017年8月29~31日, 宮城(仙台)3 )木原久美子・中川喬文・山田明徳・吉村剛, “腐朽を受けた木質のシロアリによる摂食排出量の定量化”, 第50回日本原生生物学会大会・第1回日本共生生物学会大会・合同大会, W11, 2017年11月19日, 茨城(筑波)4 )中川喬文・木原久美子, “エサの種類と腐朽期間の違いによるオオシロアリの生存率”, 第27回九州沖縄高専フォーラム, 2017年12月9日, 福岡(久留米)5 )Kumiko Kihara, Takafumi Nakagawa, Akinori Yamada, Shigeharu Moriya, Yuichi Hongoh, Tsuyoshi Yoshimura, Quantitative Analysis of "Termite Frass" and "Termite Droppings" Using Decayed and Undecayed Food, The 13th conference of the Pacific Rim Termite Research Group (PRTRG 13), 2020年2月12日 - 2020年2月13日, 台湾(台北)引用文献1 )木原久美子・山田明徳・吉村剛, 生存圏シンポジウム・DOL/LSFに関する全国共同利用研究成果発表会(平成25, 27-30年度の各回), 京都(宇治)4. まとめと展望 腐朽木材とシロアリの関係は, 木材の削りかす量や死虫率を指標として議論されている事が多い。シロアリが具体的にどのような菌によるどのような段階の分解を受けた木材やろ紙をどのくらいの量だけ摂食排出しているのかを定量的に求められれば, シロアリと環境微生物がどのように協働的に木材を分解していくのか, 木材等の中でシロアリ侵入部位と侵入していない部位のそれぞれの特徴を解明出来る可能性がある。5. 謝辞 本研究は, 京都大学生存圏研究所DOL/LSF共同利用公募研究(平成25年度~平成30年度)として行ったものである。吉村剛先生には, 研究の機会, 人との繋がりの機会, 新しい挑戦への機会, キャリアの発展につながる機会を幾度となく頂いたばかりでなく, 共同研究者としてご助言をいただいた。本研究においても,
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