In Memorium : Tsuyoshi Yoshimura公益社団法人日本しろあり対策協会 金城 一彦 京都大学生存圏研究所の教授, 公益社団法人日本シロアリ対策協会の理事を歴任された吉村剛先生が令和3年5月18日にご逝去なさいました。吉村先生のご功績は偉大で膨大な業績をまとめるのは困難でありますので, これまでの吉村先生との共同研究について書かせていただきます。 吉村先生との出会いは学生の頃の木材学会でした。しろあり腸内の原生動物のことについて教えていただいたのが初めての出会いでした。以来, お目にかかるたびにシロアリの生態, 防除方法, 沖縄のシロアリ状況等様々な情報の交換をさせていただきました。シロアリを用いた新規微生物スクリーニング法の開発研究を、京都大学生存圏研究所, 筑波大学で計画していて, 吉村先生から琉球大学も共同研究にお誘いをいただいて, 参加しました。研究試料として下等シロアリのイエシロアリ, 高等シロアリのタカサゴシロアリを用いて進めることになりました。イエシロアリは入手容易ですが, タカサゴシロアリ分布が限られていることからの採集を琉球大学引き受けました。タカサゴシロアリは石垣島以南に分布し, 地上から蟻道を延ばし樹上に巣をつくります。石垣島や西表島での分布調査の結果, 西表島の琉球大学熱帯生物圏研究センターのフィールドで採集をすることにしました。最初の採集に吉村先生も参加され, 高いところの巣を採集にはかなり苦労をしました。巣はビニールで包み段ボウルに入れて郵送するのですが, 運送屋で預かっている間に箱からシロアリが逃げ出し天井まで行列ができ, 業者から室内の駆除をするようにクレームがありましたが, 家屋に被害を与えるしろありではないことを説明し, 熱帯生物圏研究センターの職員に処理をしてもらった苦い思いでもあります。採集会に出かける前の集合写真(2011年6月) 吉村先生(後列左から2人目) 院生が研究室に来られ, オオシロアリタケの菌糸での実験を計画しているので, 菌株の分譲を依頼され, よろこんで数種類を分譲しました。そのときに, 吉村先生が日本でのオオシロアリタケの発生現場を見たことがなく是非一度はみたいとのことでしたので, 発生時期の6月に調査に出かけました。石垣市でキノコを見つけ, 土を掘り巣を確認しました。日本で初めて見たオオシロアリタケに吉村先生はすごく感動されていました。この調査で採集したキノコを料理し, 泡盛を酌み交わしながら試食をしましたが, 残念ながら吉村先生は都合で参加できませんでした。また, 持ち帰ったキノコを京都大学生存圏研究所で試食し, うまいという電話をいただき, 栽培できるといいですねという話をされました。また, 2011年の日本菌学科の西表島での採集会に吉村先生は大学院生と参加されましたが, 残念ながらオオシロアリタケは採集できませんでした。これらの研究成果はシロアリの辞典, 学会誌等に掲載されています。 日本しろあり対策協会の理事として協会の発展に貢献され, 個人的にもシロアリの生態や防除方法等の多くのことを教えていただいた先生が逝去され, 残念で仕方がありません。 吉村剛先生のご冥福を心からお祈り申し上げます。1追悼文吉村剛先生のご逝去を悼む
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