しろありNo.179
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8Termite Journal 2023.1 No.1791.1 保存処理木材における接合孔からの早期腐朽 (写真1, 写真2)。この原因は, 接合加工により生じた釘孔, ねじ孔, ボルト穴などから水分や腐朽菌が侵入報文写真1 釘穴から内部腐朽したベンチ写真2 釘穴内部腐朽の拡大写真3 JAS K4適合保存処理木材の断面 青:薬剤浸潤領域 橙:未浸潤領域富山県農林水産総合技術センター木材研究所 栗﨑 宏1.2 保存処理木材の品質規格と内部腐朽 薬剤が内部まで完全に浸潤していればこのような接合孔からの早期腐朽は発生しないはずだが, 現在の注入処理技術では, 辺材のみの材料や一部の樹種を除き, 完全浸潤は不可能である。だが, 腐朽菌はほとんどの場合, 木材の外部から侵入するため, 外周に強固な薬剤浸潤層を構築すれば, 未浸潤の内部も保護できるはずである。そこでJAS, AQの品質規格では, 強固な防腐層の必要条件として, 薬剤吸収量(=防腐に有効な薬剤濃度)と浸潤度(=容易に損耗しない防腐層の厚さ)の2つの基準を設けている(写真3)。この考え方は。諸外国の規格と共通するもので, 防腐層が物理的に破壊されない限り, 合理的である。 しかし, ほとんどの建築現場では, 木材同士を接合して構造物を構築する。釘, 木ねじなどの接合具は, 保存処理木材の防腐層を貫通し, 接合孔も貫通する。部分的ではあるが, 浸潤層は物理的に破壊され, 写真3のような浸潤度基準に適合する保存処理木材であっても, 雨水や腐朽菌の内部未浸潤部への侵入が可能となる。保存処理木材の使用マニュアル等では, その対策として施工現場で切断, 穴あけ加工をした際は断面に保存剤を塗布, 吹き付けすることとしているが, この補修処理は施工関係者の判断によるものとなり, 作業1. はじめに 木材に保存剤を加圧注入処理する保存処理によって, 木材の寿命は大きく延伸できる。しかし, 保存処理木材を用いた屋外木製品であっても, 釘や木ねじなどで接合した箇所が早期に腐朽する事例が散見されるし, 保存処理木材の内部の薬剤未浸潤部を腐朽するためである。このような内部腐朽は, 注入不足の不良材で発生するわけでなく, JAS, AQといった品質規格に適合した保存処理木材でも起こりうる腐朽である。Reports金属銅等を応用した木材腐朽抑制型接合具の開発

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