1.3 伝統的銅金物の木材腐朽抑制Termite Journal 2023.1 No.17999写真6 テストプレートを挟んだダブルレイヤーユニットのモデル写真4 三条大橋欄干の青銅製擬宝珠と支柱写真5 三条大橋欄干の青銅製釘隠しと手すり負担の大きさからか, 筆者の知る限りでは徹底されていないようである。 以上のように, 接合孔からの早期腐朽に対しては, 残念ながら効率的な予防策がないのが現状である。 筆者らは, 京都市鴨川にかかる三条大橋において, 擬宝珠など青銅製の金物を冠した欄干支柱などが周囲の部材より劣化していないことに着目し(写真4, 写真5), 欄干の木材の銅分布を蛍光X線を用いて分析(以下, XRF分析)した。その結果, 支柱から高濃度の銅が検出され, 擬宝珠からCuイオンが溶出して腐朽抑制に寄与した可能性が示唆された1)。そこで, この金属銅の木材腐朽抑制作用を応用して, 自らCuイオンを溶出して接合孔周囲の木材を防腐する「木材腐朽抑制型接合具」の開発研究に着手した。 本報では, 令和3年度しろあり対策協会研究助成を活用して実施した銅板等を用いたダブルレイヤーユニット曝露実験について報告する。2. 方法2.1 ダブルレイヤー試験 2015年から, 鹿児島日置市吹上町今田の京都大学生存圏研究所 居住圏シミュレーションフィールド(LSF)シロアリ野外試験地において, 銅板等を用いたダブルレイヤー実験を開始した。 ダブルレイヤー試験は, 試験材を上下2段, 互い違いに積み上げたユニットを曝露し, 劣化状況から試験材の耐久性を評価する実証的試験法である。非接地曝露環境における木材の耐久性を評価するために開発された試験法である2),3)。本実験では, この試験法を応用して, 耐久性の低いスギ辺材のダブルレイヤーユニットの材間に銅板等のテストプレートを挟んで, 銅板等の木材腐朽抑制効果を検討した。 写真6に, ユニットの構成をモデル的に示した。 試験地はクロマツ林内の砂地で, 平坦に整地してレンガを敷き, その上にユニットを設置した。 ユニットを構成する試験材は, 寸法30(R)×30(T)×300(L)mmのプレーナー仕上げした富山県産ボカスギ辺材人工乾燥材で, 上段19本, 下段20本とした。 ユニットは3体作製し, 銅板, 亜鉛メッキ鋼板(以下 トタン板), 塩ビ板の3種類のテストプレートでの試験に供した。以下, 銅板ユニット, トタン板ユニット, 塩ビ板ユニットと称する。 テストプレートは各12枚で, 厚さが銅板とトタン板は0.3mm, 塩ビ板は1.0mmで, 面寸法は試験材より短い30×200mmである。プレートは, 図1に示したように6枚はユニット右側エリアの上下段の間に, 試験材をまたぐよう水平にならべ, 残り6枚は左側エリア上段の試験材間に垂直に挟み込み, 中央付近はプレートを
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