しろありNo.179
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3.2 回収試験材の詳細調査3.2.1 質量減少率 図6に, 曝露4年目に各ユニットの上・下段から回収した試験材a~hの推定質量減少率を示した。銅板3.2.2 断面試料のXRF分析1414Termite Journal 2023.1 No.179図6 曝露4年目のユニットから回収した試験材の質量減少率 Cu:銅板 Glv:トタン板 PVC:塩ビ板には100%に達した。これに対して, 銅板ユニットの腐朽発生率は, 上・下段ともに低く推移し, 7年目も40%に止まっていた。 以上のように, ダブルレイヤーユニットにおける銅板の木材腐朽抑制効果は, 7年間に亘って持続することが確認された。トタン板にも腐朽抑制が認められたが, 3~4年間で効果は低下した。塩ビ板には抑制は認められなかった。ユニットとトタン板ユニットの試験材の質量減少率は, 上段, 下段ともに塩ビ板ユニットより明らかに低く, 上下段の平均で比較すると塩ビ板ユニットの56%に対し銅板ユニットは35%, トタン板ユニットは38%であった。質量減少率の比較においても, 銅板とトタン板に木材腐朽抑制が認められた。 曝露4年目の銅板ユニットから回収した8本の試験材から各3か所, 計24個の断面試料を採取した。採取した断面試料は, すべての試料で内部腐朽が確認されたが, 腐朽状況等は以下に述べるように, 採取位置によって大きく異なっていた。 銅板ユニットの試験材a(図3参照)の①~③(図4参照)から採取した断面試料の分析結果を, 図7に示した。Rは未暴露の健全材の断面試料である。図7にはデジタルカメラ接写画像, 透過X線像, Cu-Kα線像を示した。透過X線像からは密度分布を, Cu-Kα線像からは銅の分布を推定することができる。 接写画像を比較すると, 銅板非接触ゾーンの③の断面試料は, 激しく腐朽して広範囲で空洞化しているのに対し, 接触ゾーンの①②の断面試料の腐朽は全体的に軽微で空洞化には至っていない。③の腐朽は一様に拡がっているが, ①②の腐朽は主に左半分で進行し, 銅板(図の赤線の位置)と接触する右側面近くでは変色や脆弱化といった腐朽の形跡もなく, 健全材Rに近い外観であった。 透過X線像を比較すると, 試料①②の左半分や試料③では, 健全材Rと比較して明度が著しく低く, 大幅な密度低下, すなわち材質の劣化が示唆された。一方で, 試料①②の右側面付近の明度は健全材Rと差がなく, 密度低下, すなわち腐朽劣化は抑制されていると判断された。Cu-Kα線像は, 低強度側を青色, 高強度側を暖色系で表示している。Cu-Kα線強度は, 銅板と接触する試料①②の右側面では突出して高いが,銅板と接触していない試料③では健全材Rのバックグラウンドと差はほとんど検出されなかった。 以上のように, 断面試料の腐朽状況は採取位置①~③で大きく異なり, 銅板の木材腐朽抑制は①または②の断面試料で顕著であった。そこで, 試験材a~hの腐朽状況を比較するために,各試験材の①から採取した断面試料の分析結果を,図8に示した。図8は, 各試料の画像データを, 各試験材のユニット内の配置のとおりに配列した。いずれの試験材においても, 銅板から隔たった箇所では, 目視でも変色や空洞化などの腐朽の形跡がみられ, 透過X線像では密度低下もみとめられた。一方, これらの箇所のCu-Kα線像をみると, Ⅹバックグラウンドとほとんど差がなく, Cuはほとんど検出されなかった。これに対して, 銅板との接触面付近は, いずれの試験材でもCu-Kα線強度が突出して高く, 腐朽形跡や密度低下はほとんどみられなかった。注目すべきは, 試験材e, f, gの側面やdの上面は, 銅板と接触していない, もしくは1点でしか接触していないにもかかわらず, 腐朽が抑制され, 広範囲に銅が分布していたことである。これらの箇所は銅板の下方に位置し, 銅板を伝った雨水の流路にあたる。銅板接触面付近や銅板からの流路の木材では, 雨水等によって銅板から溶出したCuイオンが木材へ移行して, 腐朽を抑制したものと考えられる。

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