しろありNo.179
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解説Termite Journal 2023.1 No.17934写真1 イエシロアリ(左)とヤマトシロアリ(右)の兵蟻1. はじめに 日本しろあり対策協会では, 昭和39年にシロアリの防除施工を行う技術者の資格制度として“しろあり防除施工士制度”を創設し, これまで多くの有資格者を輩出してきた。現在, しろあり防除施工士の資格検定試験は, 協会が発刊する「シロアリ及び腐朽防除施工の基礎知識」1)に沿って行われるが, 本書は第1章「木材」, 第2章「シロアリの生態と被害」, 第3章「腐朽」, 第4章「防除薬剤」, 第5章「建築物」, 第6章「防除施工」という構成で, 木造建築物の蟻害・腐朽防除に関する幅広い情報を提供している。 日本ではこれまでに24種のシロアリが記録されているが, そのうち現時点において経済的な被害をもたらす主要なシロアリ種は, ミゾガシラシロアリ科のヤマトシロアリとイエシロアリ, そしてレイビシロアリ科のアメリカカンザイシロアリとダイコクシロアリの4種とされている1)。シロアリは種によって生態が異なるため, シロアリによる被害と確認された場合は種を同定し, それぞれに適した防除施工方法を選択しなければならない。 本稿では, 分布地域が同所的であるため混在して被害が生じえ, 防除施工の現場において最も身近なシロアリ種であるヤマトシロアリとイエシロアリを見分けるのに有効な形態的特徴を, 「シロアリ及び腐朽防除施工の基礎知識」1)と関連文献から解説する。2. ヤマトシロアリとイエシロアリを区別する ヤマトシロアリ(Reticulitermes speratus)とイエシロアリ(Coptotermes formosanus)はミゾガシラシロアリ科(Rhinotermitidae)に属するシロアリ種である。この科に属するシロアリは地中に蟻道を伸ばして周囲の枯木や建築物に侵入することから, 一般に「地下シロアリ」と呼ばれる。ヤマトシロアリは, Reticulitermes(ヤマトシロアリ属)の一種で, 北海道名寄市を北限にトカラ列島まで日本全土に分布する我々の生活に最も身近なシロアリ種である。イエシロ森林研究・整備機構 森林総合研究所 神原広平アリは, Coptotermes(イエシロアリ属)の一種で世界侵略的外来種ワースト100に選ばれる大害虫であり, 国内では千葉県以西の本州南岸から四国, 九州・沖縄, 伊豆諸島, 小笠原諸島に分布している。分布範囲から見てとれるように, これら2種は国内の一部地域で同所的に生息しているが, その区別は兵蟻の頭部形態を観察することで明瞭に区別できる(写真1)。 少し古い書籍になるが, 日本しろあり対策協会が2000年に発刊した「しろありと防除対策」2)に記載される日本産シロアリ種の検索表のうち, ヤマトシロアリとイエシロアリの兵蟻の形態形質に関わる記述を抜粋する。21(8) 頭部に目を欠き, 額腺がある。前胸は頭部よりはるかに狭い(ミゾガシラシロアリ科)22(27) 頭部は楕円または卵形で, 額腺は発達して前頭に開口し, 生きている兵蟻は乳白色の粘液を分泌する(Coptotermes)25(22) 頭部は円筒状で, 額腺開口は退化して点状, 粘液を出さない(Reticulitermes) 本誌の読者の多くの方々にとっては当たり前の形態Commentary「シロアリ及び腐朽防除施工の基礎知識 新版」~シロアリの形態を観察する~

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