しろありNo.179
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Termite Journal 2023.1 No.1793. ヤマトシロアリ属のシロアリを区別する 現在, 日本のヤマトシロアリ属(Reticulitermes)は7種3亜種に分類されており1, 3), ヤマトシロアリ(R. speratus)が基亜種(R. s. speratus)と四国亜種(R. s. leptolabralis)と九州亜種(R. s. kyushuensis)に分けられるのに加え, 関門地域で局所的に分布するカンモンシロアリ(R. kanmonensis), 奄美大島と与論島で記録されるアマミシロアリ(R. amamianus), 奄美大島・徳之島と沖縄本島から記録されるミヤタケシロアリ(R. miyatakei), 沖縄本島と周辺の島で生息が確認されるオキナワシロアリ(R. okinawanus), 石垣島と西表島で記録されるヤエヤマシロアリ(R. yaeyamanus), そして, 台湾産の種で日本では石垣島・西表島・与那国島で記録されるキアシシロアリ(R. flaviceps)がいる。かつてMorimoto(1968)4)はこれらのシロアリ種を3種5亜種に分類したが, その後, Takematsu & Yamaoka(1999)5)が化学分類学的特徴の一つである体表炭化水素に着目し, その組成を詳細に化学分析することで, 日本産ヤマトシロアリ属が7つのタイプに分類できることを明らかとした。さらに, それぞれのタイプに属する個体の形態を比較することで分類に有効な形質を再記載した6)。 Takematsu(1999)6)に記載された日本産ヤマトシロアリ属の兵蟻の検索表を以下に翻訳引用する。3535写真2 イエシロアリ(左)とヤマトシロアリ(右)の職蟻図1  シロアリ及び腐朽防除施工の基礎知識新版第2章図2. 9より引用(A:アメリカカンザイシロアリ、B:ダイコクシロアリ、C:イエシロアリ、D:ヤマトシロアリ)写真3 イエシロアリ(上)とヤマトシロアリ(下)の職蟻大顎的特徴であるが, 兵蟻を背面から見たときの頭部形態が丸形か角形かでイエシロアリ属であるかヤマトシロアリ属であるかは容易に区別できる。しかし, 被害現場の個体数が少なく職蟻しか採取できなかった場合はどうだろうか。写真2に示すとおり, 一見して区別するのは困難である。しかし, テキスト21頁1)にはヤマトシロアリとイエシロアリの職蟻を用いて区別する方法として, 大顎の形態的特徴を次のように説明している。「イエシロアリは, 左大顎の第1縁歯が端歯より小さく, 斜め前方向に突出するが, ヤマトシロアリは, 左大顎の第1縁歯と第2縁歯が同じ形をしており, 内方向に突出する。大顎の歯は摩耗するため, すり減って先端が丸くなる場合があるので注意を要する」(図1)。写真3に示すとおり, ヤマトシロアリとイエシロアリの大顎を実体顕微鏡で観察すると, 左大顎の形態が異なることが見てとれる。職蟻の大顎は頭部を押しつぶすことで前方にせり出すため, 後述する簡易な顕微鏡でも容易に観察可能である。

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