(3)GCを用いた体表炭化水素分析 生物検定に使用した各コロニー(光市4コロニー, 山口市2コロニー)からイエシロアリ職蟻50頭をガラスバイアルに入れ, ヘキサンに5分間浸漬し体表炭化水素を抽出した。このとき1コロニーから3反復分の抽出物を得たが, 山口市の1コロニーは個体数が少なかったため1反復分しか得られなかった。得られた抽出物をロータリーエバポレーターで減圧乾固し10µlのヘキサンに再び溶かし, そのうち1µlを用いてGC分析を行った。キャピラリーカラムはDB1-HTを使用し, Takematsu and Kambara(2012)を参考に温度条件を設定した。注入口温度は65℃で0.01分間保持し, 30℃/minで350℃まで上昇後, 30.1分間保持された。カラム内温度は60℃で0.1分間保持し, 20℃/minで200℃まで, 10℃/minで275℃まで、5℃/min で350℃まで上昇後, 10分間保持された17)。キャリアガスにはヘリウムを用いた。 GC分析により得られたピークはChouvenc and Su(2017)を参考に同定し, 同定できた体表炭化水素の組成比をもとに主成分分析を行った18)。3. 結果(1)異種および同種異コロニー間の敵対行動 生体を用いた生物検定によりイエシロアリおよびヤマトシロアリは同種同コロニーの対象個体に対して全Termite Journal 2023.1 No.17933図3 威嚇しているイエシロアリの様子表1 GC-EAD分析に使用するシロアリの組み合わせ図4 プローブにセットしたシロアリ頭部(図3)。噛みつき率は噛みつき行動を示した個体の割合, 敵対行動率は噛みつきあるいは威嚇のいずれかま(2)GC-EADを用いた触角電位応答の確認EADで分析した。キャピラリーカラムはDB-5MS, 注合, 強い敵対行動である攻撃行動を示したとみなしたたは両方の敵対行動を示した割合を指す。 イエシロアリのヤマトシロアリに対する敵対行動については, 対象個体として生体の代わりに殺虫したヤマトシロアリ職蟻を用いても上記と同様の生物検定を行った。対象個体には体表炭化水素がある状態の殺虫個体(体表炭化水素(CHC)有処理区: 揮発したクロロホルムを充満させた密閉容器内で6分間殺虫)あるいは体表炭化水素を除去した状態の殺虫個体(CHC除去処理区:1分間の冷凍麻酔後ヘキサンに5分間浸漬して殺虫)を使用した。 GC-EADにはイエシロアリまたはヤマトシロアリ兵蟻の頭部を使用し, 触角先端を分析直前に剃刀の刃で切り落としたものをプローブにセットした(図4)。体表炭化水素抽出物は, イエシロアリ50頭またはヤマトシロアリ100頭をガラスバイアルに入れ, ヘキサンに5分間浸漬して得た。得られた抽出物をロータリーエバポレーターで減圧乾固後, 100µlのヘキサンに再び溶かし, そのうち1~2µl (1頭当量分)を用いてGC-入口温度は300℃, カラム内温度は50℃で2分間保たれ, 10℃/minで300℃まで昇温後, 13分間保持された。キャリアガスにはヘリウムが用いられた。プローブにセットしたシロアリおよび抽出物には生物検定で敵対行動を起こした種あるいは地域のコロニーの組み合わせを用いた(表1)。C. formosanusR. speratusC. formosanus (山口市)プローブにセットするシロアリ供試する抽出物R. speratusC. formosanusC. formosanus (光市)
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