しろありNo.179
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Termite Journal 2023.1 No.17944図5  ヤマトシロアリの同種同コロニー、同種異コロニー、異種に対する同胞認識行動(N=10) 異なる文字はFisherの正確検定で5%水準で有意差があったことを示す。図6  地域別のイエシロアリの敵対行動率(同コロニー N=30, 光1→光3,4 N=10, 光3→光1,2 N=10, 光1→山口 N=6, 光3→山口 N=6, 山口→光1 N=4, 山口→光3 N=6, 異種 N=30) 異なる文字はFisherの正確検定で5%水準で有意差があったことを示す。図7  CHC処理した異種(ヤマトシロアリ)に対するイエシロアリの同胞認識行動(N=30)(CHC有処理区: クロロホルムを揮発させ殺虫させた個体, CHC除去処理区: ヘキサン洗浄し殺虫させた個体を使用) 異なる文字はFisherの正確検定で5%水準で有意差があったことを示す。図8  イエシロアリ兵蟻の同種異コロニー職蟻抽出物に対しての触角電位応答 矢印がEADの反応のあった位置。く敵対行動を示さなかったが, 異種の対象個体に対してはいずれの種も90%以上の高い敵対行動率を示すことが確認できた(図5, 6)。次に, 対象個体として生体の代わりに体表炭化水素を除去せずに殺虫したヤマトシロアリ職蟻(CHC有処理区)および体表炭化水素をヘキサンで除去したヤマトシロアリ職蟻 (CHC除去処理区)を用いてイエシロアリの同胞認識行動を確認したところ, CHC除去処理区に対してはCHC有処理区に対してよりもイエシロアリの噛みつき率および敵対行動率が有意に減少することが確認できた(図7)。 同種異コロニー間の敵対行動に関しては, ヤマトシロアリは同種異コロニーの対象個体に対して, 同コロニーに対してと同様に全く敵対行動を示さなかったが(図5), イエシロアリは採集地域によって攻撃性に違いがみられた。イエシロアリは山口県内の2地域(光市および山口市)で採集され, 光市のイエシロアリ兵蟻は光市の異コロニー職蟻に対して10%以下の敵対行動率しか示さず同種同コロニーに対しての敵対行動率と比較しても有意差がなかったのに対し, 山口市の同種異コロニーの対象個体に対しては敵対行動を示すコロニーが存在することがわかった。敵対行動を示すコロニーを用いて山口市のコロニーに対する行動を観察したところ60%以上と半数以上が敵対行動を示した(図6)。(2)異種および異コロニー間の触角電位応答 GC-EADを用いてイエシロアリおよびヤマトシロアリの兵蟻が異種の職蟻の体表炭化水素抽出物に対して触角電位応答を起こすのか確認したところ, FIDピークに対応する再現性のある複数の応答が確認できた。また, イエシロアリの異コロニー間に関しても, 生物検定で敵対行動を示した組み合わせである光市のイエシロアリ兵蟻の触角と山口市のイエシロアリ職蟻抽出物を用いて触角電位応答を確認し, FIDのピーク位置に再現性のあるEADの応答が確認できた。一例として図8にイエシロアリの異コロニー間のEAD結果を示す。

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